頸動脈アテローム性硬化と歯周病との臨床疫学的関連

「はじめに」 歯および歯周病といった口腔の健康が, 全身の健康状態にも関連していることが解明されてきている. この歴史については, 1891年にMillerが, 口腔内の感染は口腔内に限局せず, 全身部位に広がる感染源であると提唱した. よって当初根尖病変が, 次に遠隔部の全身感染の原因として歯周病原細菌に着目した病巣感染説(focal infection theory)が誕生した. ただ当時これに対する主な治療は抜歯で, 多数歯の抜歯後に病態が悪化する報告がみられたことなどから, 1940年代以降この説は放棄されていた. その後1989年に, 口腔内が不良であると心筋梗塞および脳梗塞との関連...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 65; no. 3; pp. 189 - 197
Main Authors 川上, 智史, 古市, 保志, 寺田, 裕, 長澤, 敏行, 森, 真理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 30.06.2022
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.65.189

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Summary:「はじめに」 歯および歯周病といった口腔の健康が, 全身の健康状態にも関連していることが解明されてきている. この歴史については, 1891年にMillerが, 口腔内の感染は口腔内に限局せず, 全身部位に広がる感染源であると提唱した. よって当初根尖病変が, 次に遠隔部の全身感染の原因として歯周病原細菌に着目した病巣感染説(focal infection theory)が誕生した. ただ当時これに対する主な治療は抜歯で, 多数歯の抜歯後に病態が悪化する報告がみられたことなどから, 1940年代以降この説は放棄されていた. その後1989年に, 口腔内が不良であると心筋梗塞および脳梗塞との関連がみられる報告が発表されて以降, 再度注目されるようになり現在にいたっている. 本稿では, 心筋梗塞や脳梗塞の発症に関連している動脈硬化の診断に使用される形態学的検査法のなかで, 一般的に頸動脈エコーといわれている頸動脈超音波検査による頸動脈硬化の進展程度と, 歯周病との関連研究について関連する論文を通覧し, 著者らが実施した臨床疫学的研究と合わせて, 現在までに得られている知見について述べる.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.65.189