心膜損傷を合併した外傷性横隔膜ヘルニアの1例

症例は59歳,女性.交通外傷にて救急搬送となった.来院時,血圧およびSpO2の低下,左呼吸音の減弱を認めた.CTで胃,横行結腸,肝外側区の左胸腔内への逸脱を認めた.横隔膜損傷による外傷性横隔膜ヘルニアと診断し,手術を施行した.開腹すると,左横隔膜に長径12cmの欠損を認めた.脱出臓器は容易に腹腔内に引き出すことが可能であり,虚血性変化や損傷は認めなかった.胸腔内を観察すると,横隔膜損傷に加え,心膜損傷を伴い,それぞれ連続縫合にて閉鎖した.外傷性横隔膜損傷は多数臓器損傷を合併していることが多いとされるが,外傷性横隔膜損傷に伴う心膜損傷は稀である.解剖学的に,横隔膜と心膜は連続した組織であり,心嚢...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 9; pp. 1449 - 1453
Main Authors 浅井, 宏之, 江口, 祐輝, 上野, 修平, 澤井, 美里, 杉田, 三郎, 木村, 昌弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.1449

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Summary:症例は59歳,女性.交通外傷にて救急搬送となった.来院時,血圧およびSpO2の低下,左呼吸音の減弱を認めた.CTで胃,横行結腸,肝外側区の左胸腔内への逸脱を認めた.横隔膜損傷による外傷性横隔膜ヘルニアと診断し,手術を施行した.開腹すると,左横隔膜に長径12cmの欠損を認めた.脱出臓器は容易に腹腔内に引き出すことが可能であり,虚血性変化や損傷は認めなかった.胸腔内を観察すると,横隔膜損傷に加え,心膜損傷を伴い,それぞれ連続縫合にて閉鎖した.外傷性横隔膜損傷は多数臓器損傷を合併していることが多いとされるが,外傷性横隔膜損傷に伴う心膜損傷は稀である.解剖学的に,横隔膜と心膜は連続した組織であり,心嚢底部において両者は癒合している.横隔膜損傷例においては,本症例のように横隔膜から心膜へと連続する裂傷が生じ得ることを念頭に置く必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.1449