S-PRG溶出液のポリマイクロバイアルバイオフィルムに対する抗菌効果
「抄録」目的:口腔バイオフィルムの除去は, 歯科疾患のみならず全身疾患の予防にも繋がることから近年注目されている. 特に災害時など口腔清掃が困難な環境においては, バイオフィルムが肺炎などの感染症の原因になりやすく, 簡便でより有効な口腔ケアが必要である. 本研究では, 唾液より作製したポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルを用いて, フッ化物・ストロンチウムおよびホウ酸などのイオンを含有するsurface prereacted glass ionomer(S-PRG)フィラー溶出液の, バイオフィルムに対する抗菌効果を検討した. 材料と方法:S-PRGフィラーを蒸留水に懸濁して各種イオンを...
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Published in | 日本歯科保存学雑誌 Vol. 57; no. 5; pp. 414 - 420 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科保存学会
2014
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Summary: | 「抄録」目的:口腔バイオフィルムの除去は, 歯科疾患のみならず全身疾患の予防にも繋がることから近年注目されている. 特に災害時など口腔清掃が困難な環境においては, バイオフィルムが肺炎などの感染症の原因になりやすく, 簡便でより有効な口腔ケアが必要である. 本研究では, 唾液より作製したポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルを用いて, フッ化物・ストロンチウムおよびホウ酸などのイオンを含有するsurface prereacted glass ionomer(S-PRG)フィラー溶出液の, バイオフィルムに対する抗菌効果を検討した. 材料と方法:S-PRGフィラーを蒸留水に懸濁して各種イオンを溶出させた上清を用いて作製したbuffered McBain 2005培養液をS-PRGフィラー溶出液含有培養群(S群)とし, 脱イオン水で作製したbuffered McBain 2005培養液を用いて2倍および10倍希釈した0.5S群, 0.1S群を作製した. また, S-PRGフィラー溶出液と同濃度のフッ化物を含むフッ化ナトリウム含有培養液をF群, それを2倍および10倍希釈した群を0.5F, 0.1Fとした計6群を試験培養液群とした. 対照群には, buffered McBain 2005培養液(Cont群)を使用した. ポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルは健康な被験者1名の刺激唾液を用い, buffered McBain 2005培養液中にカバーグラスを懸架, 37℃で10時間嫌気培養後, 新鮮培養液に交換し, 継続して24時間まで嫌気培養することにより作製した. その後, S-PRG溶出液の影響を検討するため実験開始24時間後から48時間後まで各種試験培養液を用いて嫌気培養した. 各実験群において, 各種培養液の24, 34, 48時間後のpHおよび48時間後の生菌数を測定し, 実験群間の比較はOne-way ANOVAおよびGames-Howell検定により有意水準5%で行った. 結果:培養液のpHは, 34時間培養後でS群がpH6.8, 0.5S群がpH6.4で, 48時間培養時においてもS群はpH6.8であり, S群はほかの実験群に対して有意に高い値を示した. 48時間後の生菌数は, Cont群(5.8×10 8CFU/ml)に比較してS群(1.7×10 7CFU/ml), 0.5S群(1.2×10 8CFU/ml), F群(8.6×10 7CFU/ml)および0.5F群(2.3×10 8CFU/ml)は有意に低い値を示し, またS群はF群に比較して有意に低い値であった. 結論:S-PRG溶出液に含有される多種のイオンはバイオフィルムの成熟を抑制し, 生菌数を減じる可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0387-2343 |
DOI: | 10.11471/shikahozon.57.414 |