pH調整によるEDTA溶液の根管象牙質に及ぼす影響

目的 : 本研究は, pH 12.2に調整した3%EDTA (以降pH 12.2 EDTA) 溶液の根管洗浄剤としての臨床応用を目的として, ヒト抜去歯根管象牙質に対する象牙質脱灰能とスミヤー層除去効果について解析した. 方法 : pH 12.2 EDTA溶液の無機質溶解作用は, ヒト単根抜去歯10本を使用して解析した. pH 9.0の3%EDTA溶液 (スメアクリーン) を対照群として比較した. 試料は歯根を垂直割断後, 象牙質断面にスミヤー層を実験的に誘導した. 象牙質脱灰能の解析には, pH 12.2 EDTA溶液を試料に対して1~60分間経時的に作用させ, 所定時間経過後の根管象牙質表...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 63; no. 5; pp. 425 - 431
Main Authors 鈴木, 二郎, 石井, 信之, 藤巻, 龍治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2020
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.63.425

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Summary:目的 : 本研究は, pH 12.2に調整した3%EDTA (以降pH 12.2 EDTA) 溶液の根管洗浄剤としての臨床応用を目的として, ヒト抜去歯根管象牙質に対する象牙質脱灰能とスミヤー層除去効果について解析した. 方法 : pH 12.2 EDTA溶液の無機質溶解作用は, ヒト単根抜去歯10本を使用して解析した. pH 9.0の3%EDTA溶液 (スメアクリーン) を対照群として比較した. 試料は歯根を垂直割断後, 象牙質断面にスミヤー層を実験的に誘導した. 象牙質脱灰能の解析には, pH 12.2 EDTA溶液を試料に対して1~60分間経時的に作用させ, 所定時間経過後の根管象牙質表面硬さについて, 超微小押込み硬さ試験機にて, 押込み硬さ (HIT), 押込み弾性率 (EIT) を測定した. スミヤー層除去効果は, pH 12.2 EDTA溶液を経時的に作用後, 根管象牙質表面をSEMにて観察し, スミヤー層残存状態をHülsmannの方法に従って5段階法で判定した. 化学的安定性は, pH 12.2 EDTA溶液を25°C, 40°C保管群に分類し1, 6カ月間保管後にpH変動およびEDTA含有量の変化を解析した. 結果 : 象牙質脱灰能をHIT, EITの測定によって評価した結果, いずれの測定値も作用前と比較して統計学的有意差を認めなかった. pH 12.2 EDTA溶液による根管洗浄後にスミヤー層の残存は認められず, 対照群と比較して, スミヤー層除去効果に有意差は認められなかった. さらに, 根管歯冠部, 中央部および根尖部において, 洗浄後の根管象牙質表面硬さとスミヤー層除去効果に有意差は認められなかった. pH 12.2 EDTA溶液を6カ月間保存後, いずれの保存条件においてもpHの変化, およびEDTA含有量に変化は認められなかった. 結論 : pH 12.2 EDTA溶液は適切なスミヤー層除去効果を有し, 60分間作用後にも過剰脱灰を示さなかった. さらに, 25°C, 40°Cの保管条件で6カ月間, 色調・性状に変化は認められなかった.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.63.425