Hemifacial microsomia の外科的矯正治療例

緒言 Hemifacial microsomiaは, 胎生4~8週頃の, 顎顔面の発生に関与する第一鰓弓に由来する上顎骨, 下顎骨, 咀嚼筋, 耳骨と第二鰓弓に由来する茎状突起, 耳介, 顔面表情筋に発育不全が認められる疾患であり, 第一第二鰓弓症候群とも呼ばれる. 硬組織である下顎骨の発育不全は本症候群に特徴的で, 下顎の変形に対してはPruzansky1), Murray2), Munroら3)の分類が報告されている. 軟組織の発育不全は, 耳介から乳様突起部, 耳下腺から咬筋部周辺にみられることが多く, 顔面表情筋や咀嚼筋群も侵されることが多い. 本症候群は1902年にKirmissio...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 10; no. 3; pp. 300 - 309
Main Authors 小林, 眞司, 宮島, 桜, 府川, 俊彦, 鳥飼, 勝行, 山崎, 安晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本顎変形症学会 2000
日本顎変形症学会
Subjects
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ISSN0916-7048
1884-5045
DOI10.5927/jjjd1991.10.300

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Summary:緒言 Hemifacial microsomiaは, 胎生4~8週頃の, 顎顔面の発生に関与する第一鰓弓に由来する上顎骨, 下顎骨, 咀嚼筋, 耳骨と第二鰓弓に由来する茎状突起, 耳介, 顔面表情筋に発育不全が認められる疾患であり, 第一第二鰓弓症候群とも呼ばれる. 硬組織である下顎骨の発育不全は本症候群に特徴的で, 下顎の変形に対してはPruzansky1), Murray2), Munroら3)の分類が報告されている. 軟組織の発育不全は, 耳介から乳様突起部, 耳下腺から咬筋部周辺にみられることが多く, 顔面表情筋や咀嚼筋群も侵されることが多い. 本症候群は1902年にKirmissionによりはじめて報告された4). 本症候群の発生頻度としては3000-5000の出生に1の割合という報告5)があり, また, 遺伝性は明確ではない6). 高度の顔面非対称の修正に際しては, 上下顎移動術や形成術, さらには骨移植7-9)や顎骨延長術10-17)などが考えられてきた. 早期からの一貫した治療が必要であると考えられており, 矯正学的には不正咬合の改善だけではなく, 顎顔面の非対称に対するアプローチも必要である. 今回われわれは, 右側を患側とするhemifacial microsomiaの外科的矯正治療を経験し, 矯正歯科と形成外科の協力診療により良好な結果が得られたので報告する. 症例 1. 症例分析 矯正歯科初診時年齢14歳2ヵ月の男児で, 顔面の非対称と叢生を主訴に来院した. 身長170.5cm, 栄養状態は良好で, 四肢体幹に異常は認められなかった. 患者は出生時から神奈川県立こども医療センター形成外科の管理下にあり, 4歳7ヵ月時に右上眼瞼部分欠損の形成術と右副耳の切除術を, 11歳7ヵ月時に右上眼瞼修正手術と睦毛内反手術を受けていたが, 咬合と顔面の非対称を改善するため外科的矯正治療を行うこととなった. なお患者は, 第二子として37週で出生, 体重は1640gと低体重児であった.
ISSN:0916-7048
1884-5045
DOI:10.5927/jjjd1991.10.300