肺癌手術中に発症した対側気胸の2例

肺切除術時の片肺換気中に対側気胸を発症した2例を経験した.症例1は左上葉切除術中,シーリングテストを契機に低酸素血症を発症した.気管支鏡で挿管チューブの位置確認や吸痰を行うも改善を認めなかった.対側気胸発症を疑い,迅速に創閉鎖してポータブル胸部X線撮影を行った.右緊張性気胸を確認し,胸腔ドレナージを施行した.症例2は左下葉切除中に低酸素血症が持続したが術中原因が同定できず,術後ポータブル胸部X線で右気胸が明らかとなった.胸腔ドレナージを施行して低酸素血症は回復した.ダブルルーメンチューブ下の手術では低酸素血症に遭遇することがしばしばある.多くの場合は,痰による閉塞やチューブ位置のずれが原因であ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 7; pp. 1026 - 1031
Main Authors 井上, 裕道, 西平, 守道, 有本, 斉仁, 苅部, 陽子, 小林, 哲, 松村, 輔二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.1026

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Summary:肺切除術時の片肺換気中に対側気胸を発症した2例を経験した.症例1は左上葉切除術中,シーリングテストを契機に低酸素血症を発症した.気管支鏡で挿管チューブの位置確認や吸痰を行うも改善を認めなかった.対側気胸発症を疑い,迅速に創閉鎖してポータブル胸部X線撮影を行った.右緊張性気胸を確認し,胸腔ドレナージを施行した.症例2は左下葉切除中に低酸素血症が持続したが術中原因が同定できず,術後ポータブル胸部X線で右気胸が明らかとなった.胸腔ドレナージを施行して低酸素血症は回復した.ダブルルーメンチューブ下の手術では低酸素血症に遭遇することがしばしばある.多くの場合は,痰による閉塞やチューブ位置のずれが原因である.術中対側気胸の発生は稀であるが,診断の遅れは致命的となる可能性がある.通常の対応手段で改善のない術中低酸素血症を認めた場合,対側気胸をまず疑い迅速に対応することが重要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.1026