閉塞性大腸炎を契機に多臓器不全となったS状結腸嵌頓鼠径ヘルニアの1例

89歳,男性.左鼠径部痛で来院.造影CTで左鼠径部へのS状結腸脱出および多量の宿便による腸閉塞を認めた.用手還納後,遅発性腸管穿孔を考慮し経過観察入院としていたが,同日ショック状態となった.造影CTで横行結腸~S状結腸に造影不良を認め,腸管壊死と診断し緊急手術による腸管切除を行った.集中治療室で人工呼吸器管理を継続したが,肝・腎機能は増悪し術後12日目に多臓器不全のため永眠した.病理所見上は粘膜内を主体に壊死・脱落を認め,閉塞性大腸炎と診断した.明らかな器質的血管障害は認めず,閉塞性大腸炎からのbacterial translocationを併発していたと考えられた.鼠径ヘルニアで閉塞性大腸炎...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 8; pp. 1344 - 1349
Main Authors 吉川, 朱実, 羽田, 匡宏, 天谷, 公司, 加治, 正英, 荒木, 達大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.1344

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Summary:89歳,男性.左鼠径部痛で来院.造影CTで左鼠径部へのS状結腸脱出および多量の宿便による腸閉塞を認めた.用手還納後,遅発性腸管穿孔を考慮し経過観察入院としていたが,同日ショック状態となった.造影CTで横行結腸~S状結腸に造影不良を認め,腸管壊死と診断し緊急手術による腸管切除を行った.集中治療室で人工呼吸器管理を継続したが,肝・腎機能は増悪し術後12日目に多臓器不全のため永眠した.病理所見上は粘膜内を主体に壊死・脱落を認め,閉塞性大腸炎と診断した.明らかな器質的血管障害は認めず,閉塞性大腸炎からのbacterial translocationを併発していたと考えられた.鼠径ヘルニアで閉塞性大腸炎を併発することは稀であり,文献的考察を含め報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.1344