顔面非対称を伴った顎関節滑膜性骨軟骨腫症に対して下顎枝垂直骨切り術を応用した1症例

緒言 滑膜性骨軟骨腫症は滑膜の増生により軟骨が生じ, さらに新生した軟骨塊が滑膜から遊離し関節腔内に遊離体を形成する疾患である. 通常好発部位は, 膝関節や肘関節であり, 顎関節に発症することはきわめてまれとされてきた1, 2). その理由として顎関節部滑膜性骨軟骨腫症は, 顎関節症に類似した臨床症状を呈することが多いことから過去においてはあまり報告がなかったからであると考えられる. しかし, 最近の顎関節部に対する画像検査3)や関節鏡検査4)の進歩に伴い, その手術報告がみられるようになってきた6-8). 今回, 著者らは顔面非対称を主訴に来院した本症例を経験し, 顎関節開放術施行前に口内法...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 11; no. 3; pp. 209 - 214
Main Authors 堀内, 薫, 古田, 治彦, 久保, 誼修, 白数, 力也, 北郷, 明成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本顎変形症学会 2001
日本顎変形症学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-7048
1884-5045
DOI10.5927/jjjd1991.11.209

Cover

More Information
Summary:緒言 滑膜性骨軟骨腫症は滑膜の増生により軟骨が生じ, さらに新生した軟骨塊が滑膜から遊離し関節腔内に遊離体を形成する疾患である. 通常好発部位は, 膝関節や肘関節であり, 顎関節に発症することはきわめてまれとされてきた1, 2). その理由として顎関節部滑膜性骨軟骨腫症は, 顎関節症に類似した臨床症状を呈することが多いことから過去においてはあまり報告がなかったからであると考えられる. しかし, 最近の顎関節部に対する画像検査3)や関節鏡検査4)の進歩に伴い, その手術報告がみられるようになってきた6-8). 今回, 著者らは顔面非対称を主訴に来院した本症例を経験し, 顎関節開放術施行前に口内法による下顎枝垂直骨切り術を併用し, 近位骨片の可動性を求めた上で, 口外から側頭耳前部切開にて関節腔内の軟骨塊, 滑膜および関節円板を摘出した. その結果, 顎関節頭の切除を行うことなく, 直視下で腫傷ならびに関節円板の摘出を容易に行うことができ, 同時に顔貌の改善と良好な術後結果が得られたので, その概要を報告する. 症例 患者:21歳, 女性. 初診:平成11年7月1日. 主訴:顔面非対称を伴う咬合異常および左側顎関節部雑音. 家族歴:特記事項なし. 既往歴:術前検査の結果, 本院内科にてvon Willeb- rand病と診断された. 現病歴:約3年前に左側顎関節脱臼の既往があった. 7ヵ月前より咬合異常と顔面非対称を自覚するも放置していた. その後徐々に顔面非対称の増悪とともに咀嚼障害と顎関節雑音(clicking)を自覚するようになったため, 近医歯科を受診した. その結果, 顎関節症を伴う顎変形症と診断され, 外科的矯正治療を勧められ当科に紹介されて来院した. 現症:正貌にてオトガイの右側への偏位が認められた(Fig. 1). また, 咬合所見では下顎歯列正中の6mm右側偏位と, 左側臼歯部の開咬が認められた(Fig. 2). さらに左側顎関節に雑音(clicking)を認めたが, 開口障害や 顎関節痛は認められなかった. X線所見:パノラマX線写真では, 左側関節突起の周囲に大小不同の一部類円形を示すX線不透過像を認めた. また左側顎関節頭は前方に偏位を示していた(Fig. 3). CT(3D-CTを合む)像では左側関節突起の全周に骨様構造物を多数認めた(Fig. 4, 5, 6). 臨床診断:顔面非対称を伴う左側顎関節部骨軟骨腫症.
ISSN:0916-7048
1884-5045
DOI:10.5927/jjjd1991.11.209