腹腔内大量出血を契機に発見されたデスモイド腫瘍の1切除例

症例は27歳男性。3日前からの腹痛が増強し,来院しようと運転中に意識レベルが低下,交通事故を起こし救急搬送された。腹部USで腹腔内に大量出血を認め,CTで膵尾部と結腸脾弯曲の間に出血を伴う腫瘤が指摘された。脾動脈分枝の破綻もしくは膵尾部腫瘍からの出血と診断し,緊急開腹した。開腹時,膵尾部の4cm大の腫瘍から活動性出血を認めた。腫瘍は結腸脾弯曲にも強固に癒着しており,腫瘍を含め膵尾部脾切除+結腸部分切除を施行した。切除検体の病理所見では腫瘍は結腸間膜由来と考えられ,組織学的には紡錘形細胞の増殖を認めた。免疫染色ではALK,CD34,c–kit,desmin,DOG–1,S–100,SMA,STA...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40; no. 7; pp. 865 - 868
Main Authors 神藤, 修, 高木, 徹, 鈴木, 昌八, 松本, 圭五, 宇野, 彰晋, 川端, 俊貴, 落合, 秀人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.11.2020
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.40.865

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Summary:症例は27歳男性。3日前からの腹痛が増強し,来院しようと運転中に意識レベルが低下,交通事故を起こし救急搬送された。腹部USで腹腔内に大量出血を認め,CTで膵尾部と結腸脾弯曲の間に出血を伴う腫瘤が指摘された。脾動脈分枝の破綻もしくは膵尾部腫瘍からの出血と診断し,緊急開腹した。開腹時,膵尾部の4cm大の腫瘍から活動性出血を認めた。腫瘍は結腸脾弯曲にも強固に癒着しており,腫瘍を含め膵尾部脾切除+結腸部分切除を施行した。切除検体の病理所見では腫瘍は結腸間膜由来と考えられ,組織学的には紡錘形細胞の増殖を認めた。免疫染色ではALK,CD34,c–kit,desmin,DOG–1,S–100,SMA,STAT6すべて陰性,beta–cateninのみ陽性所見を示したためデスモイド腫瘍と診断した。臨床経過と術中所見からは腫瘍内部の出血が腹腔内に穿破し,腹痛増強と意識レベル低下に陥ったと考えられた。術後はおおむね順調に経過し27日で退院した。腹腔内出血を伴うデスモイド腫瘍の報告はまれである。文献的考察を加え報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.40.865