骨格性下顎前突症の外科的矯正治療群と歯科矯正治療単独群との思春期前における顎顔面形態の比較

緒言 若年時の骨格性下顎前突症例に対する矯正治療は, 顎整形力による長期咬合管理によって, 良好な咬合関係を獲得することが目標とされる1-5)このような長期的な顎顔面骨格成長のコントロールによって多くの症例で上下顎間関係の改善が得られ, 引き続き矯正治療のみにより良好な永久歯咬合が獲得される. 一方, 長期にわたる矯正治療にもかかわらず, 最終的に外科手術を併用した矯正治療が必要とされる症例も少なからず認められ, このような患者の身体的, 精神的負担はきわめて大きい. したがって, 将来的に外科的矯正治療が必要となる可能性の高い症例が思春期前の早い時期における顎顔面の形態的特徴に基づいて判断で...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 11; no. 3; pp. 175 - 181
Main Authors 須田, 直人, 黒田, 敬之, 檜山, 成寿, 村上, ちはる, 石崎, 敬, 鈴木, 聖一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本顎変形症学会 2001
日本顎変形症学会
Subjects
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ISSN0916-7048
1884-5045
DOI10.5927/jjjd1991.11.175

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Summary:緒言 若年時の骨格性下顎前突症例に対する矯正治療は, 顎整形力による長期咬合管理によって, 良好な咬合関係を獲得することが目標とされる1-5)このような長期的な顎顔面骨格成長のコントロールによって多くの症例で上下顎間関係の改善が得られ, 引き続き矯正治療のみにより良好な永久歯咬合が獲得される. 一方, 長期にわたる矯正治療にもかかわらず, 最終的に外科手術を併用した矯正治療が必要とされる症例も少なからず認められ, このような患者の身体的, 精神的負担はきわめて大きい. したがって, 将来的に外科的矯正治療が必要となる可能性の高い症例が思春期前の早い時期における顎顔面の形態的特徴に基づいて判断できれば, 治療計画の立案および患者に対するインフォームドコンセントといった観点から極めて有用な情報を提供することになろう. 外科的矯正治療の方針決定は通常, 思春期性成長が終了に向かう時期を待って行われるものであり, この段階における外科的矯正治療の適応基準についての報告はこれまでにも散見される6-13). しかしながら, 思春期前の若年期において, 将来的な外科的矯正治療適用を的確に判断するための指標は現在のところ存在しない. この判断を困難にしている要因には, 思春期性成長における顎顔面骨格の成長変化の多様性も関係していると考えられる. この点に関して関谷ら14)は, 女子骨格性下顎前突症患者を用いて, 外科 的矯正治療が必要と判断された症例と矯正治療のみで安定した咬合が得られた症例の, 思春期性成長前後における顎顔面頭蓋形態の差について検討した. その結果, 思春期性成長前の段階では, 手術部では矯正群よりもsaddle angle (NSAr)は小さく, また, 下顎枝後縁が前方位にあった. 一方, SNA, SNB, ANB, 下顎下縁平面, 下顎枝の傾斜および下顎角は, 両群間で有意差は示されなかった. 以上のことから関谷ら14)は, 手術群では思春期前においてすで にSellaに対して下顎頭および下顎枝後縁が矯正群に比べ て前方に位置するという構造的特徴を有しており, これは Baccettiらの報告15)こ一致した結果であったと述べている. そしてこのような頭蓋顔面後方部における形態的差異は, 顔面前方部で評価される上下顎の前後的関係では明らかにされ得ない骨格的特徴であると述べている. 本研究の目的は, 上下顎の前後的位置の指標としてANBに加えてfunctional occlusal planeを基準とした Wits appraisalを採用し, さらに関谷ら14)が評価対象としていなかった歯系に関する計測項目を加えた上で, 手術群および矯正群を, それらの思春期前の顎顔面形態の特徴から判別可能か否かを検討することである.
ISSN:0916-7048
1884-5045
DOI:10.5927/jjjd1991.11.175