腹部大動脈瘤に発症した急性大動脈閉塞症の1例

腹部大動脈瘤(AAA)に発症した急性大動脈閉塞症(AAO)はまれな疾患であり,突発する広範な虚血から生命予後は極めて不良である.症例は82歳女性.両下肢脱力,冷感で救急搬送された.CTで最大短径41 mmのAAAおよび瘤内から両外腸骨動脈の血栓閉塞を認め,AAAに発症したAAOの診断で緊急手術の方針とした.血栓除去術のみでは血流再開が得られずステントグラフト内挿術(EVAR)を追加,両下肢の血流再開を得た.術後明らかな虚血再灌流障害はなく,術後第21日目にリハビリテーション転院となった.本疾患は腸骨大腿動脈領域の閉塞性病変や大動脈壁在血栓の塞栓などの機序が考えられるが,1カ月前のCTではAAA...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 29; no. 4; pp. 241 - 244
Main Authors 石澤, 愛, 内田, 徹郎, 渡辺, 徹雄, 関根, 祐樹, 外山, 秀司, 貞弘, 光章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 28.07.2020
日本血管外科学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.20-00042

Cover

Loading…
More Information
Summary:腹部大動脈瘤(AAA)に発症した急性大動脈閉塞症(AAO)はまれな疾患であり,突発する広範な虚血から生命予後は極めて不良である.症例は82歳女性.両下肢脱力,冷感で救急搬送された.CTで最大短径41 mmのAAAおよび瘤内から両外腸骨動脈の血栓閉塞を認め,AAAに発症したAAOの診断で緊急手術の方針とした.血栓除去術のみでは血流再開が得られずステントグラフト内挿術(EVAR)を追加,両下肢の血流再開を得た.術後明らかな虚血再灌流障害はなく,術後第21日目にリハビリテーション転院となった.本疾患は腸骨大腿動脈領域の閉塞性病変や大動脈壁在血栓の塞栓などの機序が考えられるが,1カ月前のCTではAAAの壁在血栓や腸骨動脈領域の狭窄はなかった.併存する臓器障害,AAAの形態,末梢の閉塞性病変,手術侵襲をふまえた治療戦略が重要であり,本例に対するEVARは低侵襲かつ迅速な血流再開を得られ有用であった.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.20-00042