Er : YAGレーザー照射後の象牙質に対する歯面処理が接着強さに及ぼす影響

目的 : 本研究の目的はEr : YAGレーザー照射後の象牙質面に生成する熱変性層を改質しコンポジットレジンの接着強さを回復させるため, 低出力追照射および歯面処理の効果を検討することである. 材料と方法 : ヒト抜去臼歯の象牙質面を露出させて, 耐水研磨紙#800にて注水下で研削した試料をXYZ軸フラットステージに固定し, 2種類のチップと照射エネルギーを設定 (C400F : パネル値150mJ, C800F : パネル値30mJ) し, パルス値は10 pps, 注水下で照射した. 歯面処理剤として6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液 (NaClO), p-トルエンスルフィン酸塩エタノール水溶...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 64; no. 1; pp. 57 - 65
Main Authors 日下部, 修介, 二階堂, 徹, 高垣, 智博, 村瀬, 由起, 堀田, 正人, 中川, 豪晴, 作, 誠太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2021
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.64.57

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Summary:目的 : 本研究の目的はEr : YAGレーザー照射後の象牙質面に生成する熱変性層を改質しコンポジットレジンの接着強さを回復させるため, 低出力追照射および歯面処理の効果を検討することである. 材料と方法 : ヒト抜去臼歯の象牙質面を露出させて, 耐水研磨紙#800にて注水下で研削した試料をXYZ軸フラットステージに固定し, 2種類のチップと照射エネルギーを設定 (C400F : パネル値150mJ, C800F : パネル値30mJ) し, パルス値は10 pps, 注水下で照射した. 歯面処理剤として6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液 (NaClO), p-トルエンスルフィン酸塩エタノール水溶液 (アクセル) および10%クエン酸/3%塩化第二鉄水溶液 (表面処理剤グリーン) を選択した. その後, Clearfil Mega Bond Systemを用い, Beautifil Flow F00にて接着した試料を湿度99%, 温度37°Cで24時間保存し, 引張接着強さを測定した. レーザー照射したものは6グループ (A1, A2, A3, B1, B2, B3) に分類し, レーザー照射していないコントロールグループは2グループ (Cont1, 2) に分類した. それぞれのグループは, 以下のとおりである〔Cont1 : レーザー照射, Cont2 : レーザー照射→アクセル処理→表面処理剤グリーン処理, A1 : レーザー照射 (C400F, パネル値150mJ), A2 : レーザー照射 (C400F, パネル値150mJ) →アクセル処理→表面処理剤グリーン処理, A3 : レーザー照射 (C400F, パネル値150mJ) →NaClO→アクセル処理→表面処理剤グリーン処理, B1 : レーザー照射 (C400F, パネル値150mJにC800F, パネル値30mJを追照射), B2 : レーザー照射 (C400F, パネル値150mJにC800F, パネル値30mJを追照射) →アクセル処理→表面処理剤グリーン処理, B3 : レーザー照射 (C400F, パネル値150mJにC800F, パネル値30mJを追照射) →NaClO→アクセル処理→表面処理剤グリーン処理〕. 接着試験後, 接着破断面を実体顕微鏡にて観察した. また, レーザー処理後の象牙質表面に各歯面処理材で前処理を行った各グループの試料を走査電子顕微鏡にて観察した. 結果 : 各グループの接着強さ (平均値±標準偏差, MPa) は, 以下のとおりであった [A1 (10.5±3.5)<B1 (11.2±3.3)<A3 (13.1±2.4)<B3 (15.0±4.6)<A2 (16.7±5.5)<Cont1 (17.6±5.6)<B2 (19.2±5.9)<Cont2 (22.4±6.7) ]. Cont1, Cont2, A2, B2グループは有意にA1, B1グループより高い接着強さを示した (Fisher’s PLSD test, α=0.05) が, A1, B1, A3, B3グループ間には有意差はなかった. 接着試験後の破断面からCont2とB2グループは凝集破壊が多く存在し, 凝集破壊が多いものほど接着強さは高い傾向にあった. レーザー照射後の象牙質表面の各種歯面処理後のSEM像から, A2, B2グループの管間象牙質は亀裂があるものの, 滑沢であった. しかし, A3, B3グループでは粗糙な管間象牙質面が観察された. 結論 : レーザー処理した象牙質をp-トルエンスルフィン酸塩エタノール水溶液と10%クエン酸/3%塩化第二鉄水溶液で処理すると, 接着強さが促進された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.64.57