長期の食道癌化学療法中に発症した特発性食道破裂の1例

症例は54歳,男性。2017年6月に食道扁平上皮癌と診断された。化学療法,化学放射線療法を施行し完全奏効が得られるも,半年後に原発巣の再発,両側多発肺転移を認めた。再発病変に対して胃瘻造設後より化学療法を開始した。開始3日目より悪心・嘔吐,開始5日目に呼吸困難を認め,CT検査を施行した。縦隔気腫と縦隔内の液体貯留を認め,縦隔限局型の特発性食道破裂と診断,保存的加療が選択された。翌日,呼吸状態の悪化を認め再度CT検査を施行したところ,左胸腔内への穿破が疑われ,同日緊急手術となった。左開胸による穿孔部縫合閉鎖術,洗浄ドレナージ術を施行した。術後第78病日に軽快退院となった。特発性食道破裂は,急激な...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40; no. 5; pp. 689 - 692
Main Authors 小柳, 和夫, 二宮, 大和, 小澤, 壯治, 関, 太要, 谷田部, 健太郎, 山本, 美穂, 樋口, 格
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.07.2020
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.40.689

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Summary:症例は54歳,男性。2017年6月に食道扁平上皮癌と診断された。化学療法,化学放射線療法を施行し完全奏効が得られるも,半年後に原発巣の再発,両側多発肺転移を認めた。再発病変に対して胃瘻造設後より化学療法を開始した。開始3日目より悪心・嘔吐,開始5日目に呼吸困難を認め,CT検査を施行した。縦隔気腫と縦隔内の液体貯留を認め,縦隔限局型の特発性食道破裂と診断,保存的加療が選択された。翌日,呼吸状態の悪化を認め再度CT検査を施行したところ,左胸腔内への穿破が疑われ,同日緊急手術となった。左開胸による穿孔部縫合閉鎖術,洗浄ドレナージ術を施行した。術後第78病日に軽快退院となった。特発性食道破裂は,急激な食道内圧の上昇により,食道壁の全層に損傷を生じる比較的まれな良性疾患である。本症例では悪心・嘔吐による食道内圧の上昇のほか,上部食道の閉塞や長期の化学療法による栄養状態の悪化も原因と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.40.689