B型大動脈解離の内科治療

B型大動脈解離では,合併症がない場合に内科加療が行われる.急性期の内科治療においては,心拍数を60未満におさえつつ収縮期血圧を120 mmHg以下にすることが重要である.また経過中に臓器虚血や解離腔の拡大がないか注意する必要がある.合併症のないB型解離例においては,内科治療による早期死亡率は比較的低いが,退院時生存例の5年死亡率は12–28%と報告され,残存する解離をどう治療するかが慢性期の課題とされてきた.近年,発症一年以内の胸部ステントグラフト内挿術(Thoracic Endovascular Aortic Stent Graft: TEVAR)により,解離部位の有効なリモデリングが得られ...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 32; no. 3; pp. 169 - 173
Main Author 加地, 修一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 27.05.2023
日本血管外科学会
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.23-00023

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Summary:B型大動脈解離では,合併症がない場合に内科加療が行われる.急性期の内科治療においては,心拍数を60未満におさえつつ収縮期血圧を120 mmHg以下にすることが重要である.また経過中に臓器虚血や解離腔の拡大がないか注意する必要がある.合併症のないB型解離例においては,内科治療による早期死亡率は比較的低いが,退院時生存例の5年死亡率は12–28%と報告され,残存する解離をどう治療するかが慢性期の課題とされてきた.近年,発症一年以内の胸部ステントグラフト内挿術(Thoracic Endovascular Aortic Stent Graft: TEVAR)により,解離部位の有効なリモデリングが得られ,予後の改善が見込まれることがわかってきた.しかしながらTEVAR施行時には,逆行性A型解離などの致死的な合併症が起こりうるため,現時点では,大動脈関連事象を起こす可能性が高いハイリスク例に対して施行される方向にある.一方,ハイリスク例の定義については,さまざまな研究が行われており,多数の危険因子が報告されている.正確な予後評価を行ったうえで先制TEVARの適応を決定し,予後を改善していくことが今後の課題である.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.23-00023