弾性ストッキングによる圧迫創傷の発生メカニズム—2次元力学モデルの数値解析による考察

医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の発生メカニズム解明は褥瘡に比べあまり進んでいない.しかし重症度や好発部位からはMDRPUは皮膚表面から発生することが想定される.本研究は医療関連機器の一つ,弾性ストッキング(ES)を装着した下肢を想定し,ESのしわや丸まりによる食込みを2次元力学モデルに置き換え,有限要素法(FEM)を用いて皮膚および皮下組織に生じる応力を計算し発生メカニズムを説明することを目的とした.FEMモデルは皮膚,皮下組織,骨の3層構造の円筒形とした.ESによる着圧(圧迫圧)は,5.3 kPaの,正しい装着状態を模した皮膚表面に一様な着圧と,さらに食込み部に16 kPaを作用した2例...

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Published in静脈学 Vol. 32; no. 1; pp. 119 - 126
Main Authors 橋本, 紘吉, 松田, 奈菜絵, 戸崎, 綾子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本静脈学会 21.07.2021
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ISSN0915-7395
2186-5523
DOI10.7134/phlebol.19-17

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Summary:医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の発生メカニズム解明は褥瘡に比べあまり進んでいない.しかし重症度や好発部位からはMDRPUは皮膚表面から発生することが想定される.本研究は医療関連機器の一つ,弾性ストッキング(ES)を装着した下肢を想定し,ESのしわや丸まりによる食込みを2次元力学モデルに置き換え,有限要素法(FEM)を用いて皮膚および皮下組織に生じる応力を計算し発生メカニズムを説明することを目的とした.FEMモデルは皮膚,皮下組織,骨の3層構造の円筒形とした.ESによる着圧(圧迫圧)は,5.3 kPaの,正しい装着状態を模した皮膚表面に一様な着圧と,さらに食込み部に16 kPaを作用した2例とした.結果は,皮膚および皮下組織内応力は食込み部の皮膚表面で最大となり円周方向,縦方向,半径方向の応力は各々54, 50, 21 kPaであった.一様な着圧では皮膚表面の3応力は5~9 kPaであった.ESでは,褥瘡発生メカニズムと異なり,しわや丸まりによる食込み部で円周の接線方向と縦方向に作用する圧縮力を増加し,加えて半径方向の圧力が作用し,皮膚表面に強い外力が発生しMDRPU発生の一要因と推察された.
ISSN:0915-7395
2186-5523
DOI:10.7134/phlebol.19-17