支台築造用レジン表面の唾液汚染に対する処理材の使用がレジンセメントの接着性に及ぼす影響

目的:支台築造用レジン(以後,築造用レジン)は,臨床操作に伴ってその表面に唾液汚染を受ける可能性があり,これが歯冠修復物の予後に影響を及ぼす可能性がある.そこで,唾液汚染された築造用レジン表面に対する表面処理材の使用がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について検討した. 材料と方法:築造用レジンとして,クリアフィルDCコアオートミックスONE(クラレノリタケデンタル)を,レジンセメントとしてはパナビアV5(クラレノリタケデンタル)を用いた.唾液汚染を除去するための処理材として,カタナクリーナー(KC,クラレノリタケデンタル),マルチエッチャント(ME,ヤマキン)およびUltra-Etch(UE...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 65; no. 1; pp. 38 - 46
Main Authors 庄司, 元音, 宮崎, 真至, 笠原, 悠太, 石井, 亮, 髙見澤, 俊樹, 岩瀬, 慶, 嘉月, 駿, 川本, 諒
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 28.02.2022
日本歯科保存学会
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.65.38

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Summary:目的:支台築造用レジン(以後,築造用レジン)は,臨床操作に伴ってその表面に唾液汚染を受ける可能性があり,これが歯冠修復物の予後に影響を及ぼす可能性がある.そこで,唾液汚染された築造用レジン表面に対する表面処理材の使用がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について検討した. 材料と方法:築造用レジンとして,クリアフィルDCコアオートミックスONE(クラレノリタケデンタル)を,レジンセメントとしてはパナビアV5(クラレノリタケデンタル)を用いた.唾液汚染を除去するための処理材として,カタナクリーナー(KC,クラレノリタケデンタル),マルチエッチャント(ME,ヤマキン)およびUltra-Etch(UE,Ultradent Products)を使用した.接着試験用試片の製作に際して,築造用レジンを重合硬化させ,これを被着体とした.これらの被着体表面に対して,ヒト唾液を10μl滴下して水洗,乾燥させて汚染面とした(SC群).この汚染面に対して,KC,MEおよびUEを用いて製造者指示条件で処理を行った(処理群).なお,汚染のない被着面に対して製作した試片をControl群とした.これらの被着面に内径2.4mm,高さ2.0mmのステンレスリングを静置し,セメントペーストを塡塞し,接着試験用試片とした.これらの試片を37°C精製水中に24時間保管またはサーマルサイクル(TC)を10,000回負荷した後,剪断接着強さを測定した.表面自由エネルギーの算出は,接着試験用試片と同様に製作した試片表面に対して,表面自由エネルギーが既知である3種類の液体を用いて接触角を測定することによって行った. 結果:築造用レジンに対するレジンセメントの24時間後の接着強さは,Control群(23.7MPa)に比較してSC群で有意に低い値を示したが(6.9MPa),各表面処理群ではSC群と比較して有意に高い値を示した(11.9~20.5MPa).TC負荷後におけるレジンセメントの接着強さは,処理群(9.3~14.7MPa)でControl群(17.9MPa)と比較して有意に低い値を示したものの,SC群(1.9MPa)に対しては有意に高い値を示した.築造用レジン表面における表面自由エネルギーは,SC群およびUE処理で有意に低下したが,KCおよびME処理では差は認められなかった. 結論:本実験の結果から,築造用レジン表面の唾液汚染に対する処理材の違いは,レジンセメントの接着性に影響を及ぼすことが示された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.65.38