難治性根尖性歯周炎における抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水による根管内除菌効果の検討

目的 : 感染根管歯の新規除菌法の開発は, 最終的に歯の破折や抜歯にいたる予後を改善し, ひいては超高齢社会における健康長寿の達成に繋がると考えられる. 難治性感染根管においては, 通常根管貼薬に用いる水酸化カルシウム製剤などに対して耐性の通性嫌気性グラム陽性菌, 特にEnterococcus faecalisなどが優勢となり, 象牙細管内に深く侵入し, また根尖部の歯根表面にバイオフィルムを形成すると考えられている. ナノバブル水 (ナック) は圧縮空気を含み, 100〜200nmでマイナス帯電性である. われわれはブタの根管を用いたin vitroモデルにおいて, ナノバブル水が象牙細管へ...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 63; no. 1; pp. 73 - 82
Main Authors 中島, 美砂子, 庵原, 耕一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2020
日本歯科保存学会
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.63.73

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Summary:目的 : 感染根管歯の新規除菌法の開発は, 最終的に歯の破折や抜歯にいたる予後を改善し, ひいては超高齢社会における健康長寿の達成に繋がると考えられる. 難治性感染根管においては, 通常根管貼薬に用いる水酸化カルシウム製剤などに対して耐性の通性嫌気性グラム陽性菌, 特にEnterococcus faecalisなどが優勢となり, 象牙細管内に深く侵入し, また根尖部の歯根表面にバイオフィルムを形成すると考えられている. ナノバブル水 (ナック) は圧縮空気を含み, 100〜200nmでマイナス帯電性である. われわれはブタの根管を用いたin vitroモデルにおいて, ナノバブル水が象牙細管への薬剤浸透促進効果, およびスミヤー層除去効果を有することを明らかにした. 今回は, 薬剤含有ナノバブル水がイヌの難治性根尖性歯周炎に有効であるかを検討することを目的とする.  方法 : イヌ2歳齢の歯を抜髄, 根管拡大後, 開放状態で1カ月放置し, その後貼薬せず仮封してさらに2カ月置き, 感染根管を作製した. まずドキシサイクリン塩酸塩について, ナノバブル水とともに洗浄と貼薬を4回行った. さらに同じ根管に対して, 抗菌ナノパーティクルをナノバブル水とともに洗浄と貼薬を3回行った. 釣菌した根管内細菌を嫌気培養し, 細菌コロニー数測定により除菌効果を評価した. 同様の操作を6〜15日ごとに4回目まで行った. 治療2カ月後に歯髄幹細胞の移植による歯髄再生治療を行った. さらに根管治療前, 治療2カ月後および細胞移植2カ月後の根尖病変の変化を歯科用CBCTにより解析した. 細胞移植2カ月後に抜歯し, パラフィン切片をグラム染色しバイオフィルムを観察した.  結果 : ドキシサイクリン含有ナノバブル水は, 4回繰り返しても根管内を除菌できなかった. さらに抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水を3回適応することにより, 細菌数を検出限界以下に有意に減少させることができた. また, 歯根, 根尖周囲組織やセメント小腔にバイオフィルムはほとんどみられず, 根尖病変の縮小も有意にみられた. 一方, 抗菌ナノパーティクルのみではほとんど変化はみられなかった. さらに, 抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水を適応した根管においては細胞移植により根尖部歯周組織および歯髄の再生がみられた.  結論 : これらの結果より, 抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水は難治性根尖性歯周炎の根管を除菌でき, 歯髄再生治療も有効となる可能性が示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.63.73