抗リン脂質抗体症候群に伴う腹部大動脈終末および腸骨動脈閉塞に対してY字型人工血管による外科的血行再建を施行した一例

抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome; APS)は,全身の動静脈に血栓症を生じる疾患であるが,大動脈・腸骨動脈領域の血栓症をきたすことは稀である.症例は数年前より肺塞栓症を契機にAPSと診断され他院で加療中であった55歳男性.左下肢の安静時痛および左第4, 5趾の壊疽の治療に難渋するため加療目的で当科紹介となった.右第5趾が壊疽,脱落した既往があった.一時抗凝固薬を内服していたが壊疽を契機に休薬となっていた.動脈造影検査で大動脈終末の狭窄および右外腸骨動脈の閉塞を認めたが膝窩動脈以遠には狭窄を認めず,大動脈・腸骨動脈の血栓症による重症下肢虚...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 31; no. 2; pp. 57 - 60
Main Authors 中村, 康人, 熊田, 佳孝, 河合, 憲一, 石田, 成吏洋, 森, 旭弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 15.04.2022
日本血管外科学会
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.22-00004

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Summary:抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome; APS)は,全身の動静脈に血栓症を生じる疾患であるが,大動脈・腸骨動脈領域の血栓症をきたすことは稀である.症例は数年前より肺塞栓症を契機にAPSと診断され他院で加療中であった55歳男性.左下肢の安静時痛および左第4, 5趾の壊疽の治療に難渋するため加療目的で当科紹介となった.右第5趾が壊疽,脱落した既往があった.一時抗凝固薬を内服していたが壊疽を契機に休薬となっていた.動脈造影検査で大動脈終末の狭窄および右外腸骨動脈の閉塞を認めたが膝窩動脈以遠には狭窄を認めず,大動脈・腸骨動脈の血栓症による重症下肢虚血と診断.血行再建術の適応と判断した.手術は開腹によりY字型人工血管を用いて腹部大動脈–右総大腿動脈および左総腸骨動脈バイパス術を施行した.術後1年経過は良好で,安静時痛は改善し左足趾壊疽も改善傾向である.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.22-00004