骨盤内臓全摘・回腸導管造設後の高Cl-性代謝性アシドーシスの1例

症例は78歳,女性.頻尿,残尿感を主訴に近医を受診した.CTでS状結腸から連続する腫瘤を認め,下部内視鏡検査でS状結腸癌の診断となり,当科紹介となった.術前診断はcT4b(膀胱,右尿管,回腸末端)N0M0 Stage IIc.術前化学療法を施行し,効果判定はstable diseaseであった.非切除因子はなく,骨盤内臓全摘術(回盲部,左側結腸,膀胱,左右尿管,子宮,卵巣摘出),回腸導管造設を施行した.術後は合併症なく退院となった.退院後に食思不振が出現し,血液ガスでpH 7.12の非AG開大性アシドーシスの所見があり,回腸導管からのCl-再吸収による代謝性アシドーシスと診断した.炭酸水素ナト...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 3; pp. 514 - 518
Main Authors 黒滝, 拓磨, 高田, 実, 加藤, 健太郎, 山吹, 匠, 安保, 義恭, 中村, 文隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.83.514

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Summary:症例は78歳,女性.頻尿,残尿感を主訴に近医を受診した.CTでS状結腸から連続する腫瘤を認め,下部内視鏡検査でS状結腸癌の診断となり,当科紹介となった.術前診断はcT4b(膀胱,右尿管,回腸末端)N0M0 Stage IIc.術前化学療法を施行し,効果判定はstable diseaseであった.非切除因子はなく,骨盤内臓全摘術(回盲部,左側結腸,膀胱,左右尿管,子宮,卵巣摘出),回腸導管造設を施行した.術後は合併症なく退院となった.退院後に食思不振が出現し,血液ガスでpH 7.12の非AG開大性アシドーシスの所見があり,回腸導管からのCl-再吸収による代謝性アシドーシスと診断した.炭酸水素ナトリウムの静注により,症状は改善した.現在は炭酸水素ナトリウムの内服に移行し,食思不振等の症状なく経過している.回腸導管によるアシドーシスは報告が少ないが,尿路再建後の合併症についても把握しておくべきと思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.514