聴覚障害児における会話時の意図理解に関する検討:社会的知識の使用

要旨: 聴覚障害児45名を対象に, 会話時の他者の意図の理解について, 同年齢の健聴児232名と比較して検討した。3種の課題場面について, 社会的知識を用いて理解を求める条件 (文脈あり条件) と社会的知識がなくても理解可能な条件 (文脈条件) を設定し, 書記で回答を求めた。その結果, 聴覚障害児では, 社会的知識の文脈あり条件で, 他児の意図の理解について低下した。とくに対人的な配慮を必要とする条件で課題を示した。課題成績については, 対象児の言語能力 (読書力検査結果) との相関が高く, 平均聴力レベルとの相関は有意ではなかった。社会的知識を用いて他者の意図を理解する能力は, 幼児期後期...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 61; no. 6; pp. 538 - 545
Main Authors 野原, 信, 廣田, 栄子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.12.2018
日本聴覚医学会
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:要旨: 聴覚障害児45名を対象に, 会話時の他者の意図の理解について, 同年齢の健聴児232名と比較して検討した。3種の課題場面について, 社会的知識を用いて理解を求める条件 (文脈あり条件) と社会的知識がなくても理解可能な条件 (文脈条件) を設定し, 書記で回答を求めた。その結果, 聴覚障害児では, 社会的知識の文脈あり条件で, 他児の意図の理解について低下した。とくに対人的な配慮を必要とする条件で課題を示した。課題成績については, 対象児の言語能力 (読書力検査結果) との相関が高く, 平均聴力レベルとの相関は有意ではなかった。社会的知識を用いて他者の意図を理解する能力は, 幼児期後期から学童期に獲得されるが, 簡単な会話に支障がない場合にも, 聴覚障害児の言語発達の課題として, 指導の適用について検討が必要であると考えられた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.61.538