破裂性腹部大動脈瘤の治療に対するステントグラフト内挿術の効果

要旨:【目的】腹部大動脈瘤待機手術はステントグラフト内挿術(EVAR)が普及し治療成績も安定している.しかし破裂性腹部大動脈瘤(rAAA)の治療成績は不良であり,EVAR の適応も限定され,成績も不明な点が多い.今回われわれはrAAA に対するEVAR の治療効果について検討した.【方法】2004年4 月~ 2013 年3 月に行ったrAAA に対する緊急手術52 例について検討した.2010 年以前は開腹手術を第一選択とし,2011 年以降はEVAR を第一選択とした.開腹手術(OR 群)は39 例,EVAR は13 例であった.循環動態が不安定な症例に対するEVAR では術前に大動脈閉塞バ...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 23; no. 2; pp. 89 - 95
Main Authors 皆川, 正仁, 齊藤, 良明, 福井, 康三, 福田, 和歌子, 渡辺, 健一, 鈴木, 保之, 福田, 幾夫, 谷口, 哲, 近藤, 慎浩, 大徳, 和之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2014
日本血管外科学会
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.13-00112

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Summary:要旨:【目的】腹部大動脈瘤待機手術はステントグラフト内挿術(EVAR)が普及し治療成績も安定している.しかし破裂性腹部大動脈瘤(rAAA)の治療成績は不良であり,EVAR の適応も限定され,成績も不明な点が多い.今回われわれはrAAA に対するEVAR の治療効果について検討した.【方法】2004年4 月~ 2013 年3 月に行ったrAAA に対する緊急手術52 例について検討した.2010 年以前は開腹手術を第一選択とし,2011 年以降はEVAR を第一選択とした.開腹手術(OR 群)は39 例,EVAR は13 例であった.循環動態が不安定な症例に対するEVAR では術前に大動脈閉塞バルーンを挿入した.さらに手術最後に開腹しabdominal compartment syndrome(ACS)を予防した.【結果】rAAA 52 例の周術期死亡率は6 例,11.5%であり,全例循環不安定例であった.循環不安定例は16 例で死亡率は37.5%であった.OR 群とEVAR 群の比較では出血量の減少,入院期間の短縮,自宅退院率の向上をEVAR 群に認めた.周術期死亡率はOR 群12.8%,EVAR 群7.7%であったが,有意差は認めなかった.EVAR 群において術後腹腔内圧は全例20 mmHg 以下であり,ACS や腸管虚血,創感染の合併症も認めなかった.【結論】rAAA に対するEVAR は周術期死亡率の有意な低下を認めなかった.しかし,種々の工夫を加えることで循環不安定例でもACS の発症を予防することは可能である.EVAR 群では出血量の減少,入院期間の短縮,自宅退院率の向上を認め,rAAA に対するEVAR は予後を改善すると考えられた.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.13-00112