救命し得た,膵頭部への穿通性十二指腸潰瘍出血の1例

症例は87歳,女性。十二指腸潰瘍出血に対して前医で入院加療中,出血が持続し止血困難なため,当院へ転院搬送された。上部消化管内視鏡検査では,十二指腸球部後壁に巨大な潰瘍性病変を認め,潰瘍底の露出血管より動脈性出血を認めた。内視鏡的止血困難で,出血が持続し,出血性ショックとなり,緊急開腹手術を選択した。手術所見では,潰瘍は膵頭部へ穿通し,強固に癒着して剝離困難であった。膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy:PD)も検討されたが,出血性ショック,凝固障害,高齢の患者背景を考慮して,膵臓側に潰瘍底を残す幽門側胃切除術を施行した。術後膵液瘻なく経過は良好で,術後24日目に前医へ...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 42; no. 4; pp. 557 - 560
Main Authors 田中, 千弘, 田中, 秀治, 河合, 雅彦, 小森, 充嗣, 岩田, 至紀, 長尾, 成敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.05.2022
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.42.557

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Summary:症例は87歳,女性。十二指腸潰瘍出血に対して前医で入院加療中,出血が持続し止血困難なため,当院へ転院搬送された。上部消化管内視鏡検査では,十二指腸球部後壁に巨大な潰瘍性病変を認め,潰瘍底の露出血管より動脈性出血を認めた。内視鏡的止血困難で,出血が持続し,出血性ショックとなり,緊急開腹手術を選択した。手術所見では,潰瘍は膵頭部へ穿通し,強固に癒着して剝離困難であった。膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy:PD)も検討されたが,出血性ショック,凝固障害,高齢の患者背景を考慮して,膵臓側に潰瘍底を残す幽門側胃切除術を施行した。術後膵液瘻なく経過は良好で,術後24日目に前医へ転院となった。膵臓への穿通性十二指腸潰瘍出血に対しては,迅速かつ慎重な治療選択が求められるが,今回高侵襲手術を回避した術式を選択し,救命し得た1例を報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.42.557