回腸導管造設状態患者の小腸穿孔に対する緊急開腹術後に偽性腎不全をきたした1 例

症例は70 歳台,男性。約2 年前に他院で膀胱癌に対して膀胱全摘・回腸導管造設術を受けている。腹痛のため前医を受診しCT 検査で消化管穿孔が疑われ当院へ紹介となり,緊急開腹術を施行した。空腸に穿孔部を認め,小腸部分切除術を行った。術後全身状態はすみやかに改善したが,術後第4 病日に尿量の低下と血清クレアチニン値の上昇を認めた。腹腔内に留置したドレーンの排液も2,300mL/ 日超と急激な増加を認め,腹水クレアチニン値は36.1mg/dL と高値であった。CT urography と回腸導管造影で回腸導管からの造影剤の漏出を確認し,導管損傷と診断した。バルーンカテーテルを留置し保存的加療とし,そ...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 42; no. 1; pp. 105 - 108
Main Authors 西澤, 一, 小林, 慎二郎, 増田, 哲之, 木村, 紗衣, 小泉, 哲, 井田, 圭亮, 土橋, 篤仁, 大坪, 毅人, 澤田, 真裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2022
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.42.105

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Summary:症例は70 歳台,男性。約2 年前に他院で膀胱癌に対して膀胱全摘・回腸導管造設術を受けている。腹痛のため前医を受診しCT 検査で消化管穿孔が疑われ当院へ紹介となり,緊急開腹術を施行した。空腸に穿孔部を認め,小腸部分切除術を行った。術後全身状態はすみやかに改善したが,術後第4 病日に尿量の低下と血清クレアチニン値の上昇を認めた。腹腔内に留置したドレーンの排液も2,300mL/ 日超と急激な増加を認め,腹水クレアチニン値は36.1mg/dL と高値であった。CT urography と回腸導管造影で回腸導管からの造影剤の漏出を確認し,導管損傷と診断した。バルーンカテーテルを留置し保存的加療とし,その後は尿量と血清クレアチニンは改善し,Douglas 窩ドレーンの排液も減少した。腹腔内に流出した尿中のクレアチニンなどが腹膜を介して再吸収され,血清中で高値を示す病態を偽性腎不全(pseudo-renal failure)とよぶ。しばしば,急性腎不全と混同されるが,早期に鑑別にあげ,治療を進めていく必要がある。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.42.105