伝承と真実の乖離

日々の診療行為の根拠には, 少なからず伝承が含まれている. しかし, 伝承はすべて真実なのであろうか? 私が学生, 研修医のころは, 先天性心疾患や弁膜症, 肥大型心筋症のような特殊な病態を除くと, 心不全とは左室駆出率が低下している病態を指す, と教わっていた. 確か1989年であったと記憶しているが, 心不全急性増悪でCCUに入院してこられた高齢女性(確か60歳代であったが, 当時の感覚では高齢)の患者さんの心エコーをみながら「左心室は元気に動いているし, 特に弁膜症もなく, これは心不全とはいえないし……」と, この患者さんの病態をどのように理解したらいいのかわからず, 頭の中が「?」だ...

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Published inShinzo Vol. 46; no. 1; p. 1
Main Author 山本, 一博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2014
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.46.1

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Summary:日々の診療行為の根拠には, 少なからず伝承が含まれている. しかし, 伝承はすべて真実なのであろうか? 私が学生, 研修医のころは, 先天性心疾患や弁膜症, 肥大型心筋症のような特殊な病態を除くと, 心不全とは左室駆出率が低下している病態を指す, と教わっていた. 確か1989年であったと記憶しているが, 心不全急性増悪でCCUに入院してこられた高齢女性(確か60歳代であったが, 当時の感覚では高齢)の患者さんの心エコーをみながら「左心室は元気に動いているし, 特に弁膜症もなく, これは心不全とはいえないし……」と, この患者さんの病態をどのように理解したらいいのかわからず, 頭の中が「?」だらけになったのを覚えている.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.46.1