東日本大震災と原発過酷事故による放射性物質汚染地域からの食品供給と風評被害 疫学的・経済学的・社会心理学的視点からの考案

「1. 緒論」2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに付随した大津波により, 東京電力(東電)の福島第一原子力発電所(原発)において, 全冷却電源喪失による原子炉の炉心融解となり, 大量の放射性物質が環境中に漏洩する過酷な事故になった. 当然, 漏洩した放射性物質からの放射線により, 今後かなり長期間・広範囲にわたり, 健康障害リスクの上昇が危惧される. そのリスクの大きさがどの程度か科学的知見を得るために, 福島県民を対象とした, 追跡疫学研究が実施されている. 今回の原発過酷事故による健康リスクの上昇は, 1986年のチェルノブイリの原発事故後に周辺住民を対象とした約四半...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 68; no. 3; pp. 207 - 214
Main Authors 杉田, 稔, 宮川, 路子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2013
日本衛生学会
Subjects
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.68.207

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Summary:「1. 緒論」2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに付随した大津波により, 東京電力(東電)の福島第一原子力発電所(原発)において, 全冷却電源喪失による原子炉の炉心融解となり, 大量の放射性物質が環境中に漏洩する過酷な事故になった. 当然, 漏洩した放射性物質からの放射線により, 今後かなり長期間・広範囲にわたり, 健康障害リスクの上昇が危惧される. そのリスクの大きさがどの程度か科学的知見を得るために, 福島県民を対象とした, 追跡疫学研究が実施されている. 今回の原発過酷事故による健康リスクの上昇は, 1986年のチェルノブイリの原発事故後に周辺住民を対象とした約四半世紀の追跡疫学研究結果から, 大きくはないと客観的に予想される. 原発近傍から遠隔地まで, 事故後に既に漏洩放射性物質からの放射線に曝露された住民, および今後長期間にわたってそれに曝露されるであろう住民の健康障害リスクの上昇や, 原発から漏洩した放射性物質で汚染された農作物や海産物の摂取によるリスクの上昇が危惧されている.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.68.207