軽度低酸素環境曝露による脳血流自動調節の減弱 周波数解析と大腿カフ解除法による検討

「緒言」 ヒトは産業現場(穀物などの貯蔵庫, 船倉, 金属類の倉庫, マンホール内ほか)や日常の活動(登山, 高地トレーニング, 航空機旅行)において, 低濃度酸素環境に曝露され, 低酸素血症になる. また, 疾病や手術侵襲など医学的要因によっても低酸素血症になる. その際, それ自体では失神に至るほどではない軽度な低酸素血症によっても, 起立等により若干血圧が低下しただけで失神を起こし, 外傷や重大事故に陥る可能性がある. 実際, 健常人への低酸素環境曝露の先行研究において, それ自体では失神に至るほどではない低酸素血症によっても起立時失神の発症頻度が増すことが報告されている(1). 失神に...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 67; no. 4; pp. 508 - 513
Main Authors 曷川, 元, 小川, 洋二郎, 青木, 健, 柳田, 亮, 岩崎, 賢一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2012
日本衛生学会
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Summary:「緒言」 ヒトは産業現場(穀物などの貯蔵庫, 船倉, 金属類の倉庫, マンホール内ほか)や日常の活動(登山, 高地トレーニング, 航空機旅行)において, 低濃度酸素環境に曝露され, 低酸素血症になる. また, 疾病や手術侵襲など医学的要因によっても低酸素血症になる. その際, それ自体では失神に至るほどではない軽度な低酸素血症によっても, 起立等により若干血圧が低下しただけで失神を起こし, 外傷や重大事故に陥る可能性がある. 実際, 健常人への低酸素環境曝露の先行研究において, それ自体では失神に至るほどではない低酸素血症によっても起立時失神の発症頻度が増すことが報告されている(1). 失神に共通する病態生理は「脳全体の一過性低灌流」であり(2), 起立後の血圧低下が著しいため脳血流の供給が不足する例が多いと考えられている. しかしそれ以外に, 脳血流調節の異常が失神発症に関与している可能性も示唆されている(3-5).
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.67.508