高度大動脈弁閉鎖不全症,大動脈弁輪拡張症,上行大動脈瘤を合併した先端巨大症性心筋症に対して二度にわたる侵襲的加療で良好な経過をたどった1例

先端巨大症は成長ホルモンの過剰分泌により発症し,長期間の暴露は心血管イベントのリスクとされている.51歳の男性であった.夜間呼吸困難を主訴に来院し,初回心不全で入院した.心不全は利尿薬でコントロールされており,経胸壁心臓超音波検査で左室肥大と左室拡大を認め,左室駆出率27%と低下し,高度大動脈弁閉鎖不全症を認めた.CT検査では大動脈弁輪部,上行大動脈の拡張を認めた.身体所見から先端巨大症を疑い,ブドウ糖負荷試験にて成長ホルモンとソマトメジンCが抑制されず,頭部MRIでは下垂体腺腫が確認されたため,活動性の先端巨大症と診断した.本症例は先端巨大症心筋症と大動脈弁閉鎖不全症が合併しており,下垂体腺...

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Published in心臓 Vol. 53; no. 10; pp. 1076 - 1081
Main Authors 登坂, 憲吾, 那須, 崇人, 辻, 佳子, 斎藤, 大樹, 田林, 東, 二宮, 亮, 木村, 琢巳, 坪井, 潤一, 伊藤, 智範, 金, 一, 森野, 禎浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.10.2021
日本心臓財団・日本循環器学会
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Summary:先端巨大症は成長ホルモンの過剰分泌により発症し,長期間の暴露は心血管イベントのリスクとされている.51歳の男性であった.夜間呼吸困難を主訴に来院し,初回心不全で入院した.心不全は利尿薬でコントロールされており,経胸壁心臓超音波検査で左室肥大と左室拡大を認め,左室駆出率27%と低下し,高度大動脈弁閉鎖不全症を認めた.CT検査では大動脈弁輪部,上行大動脈の拡張を認めた.身体所見から先端巨大症を疑い,ブドウ糖負荷試験にて成長ホルモンとソマトメジンCが抑制されず,頭部MRIでは下垂体腺腫が確認されたため,活動性の先端巨大症と診断した.本症例は先端巨大症心筋症と大動脈弁閉鎖不全症が合併しており,下垂体腺腫が出血をきたしていたため,下垂体腺腫に対する経蝶形骨洞手術を先行して施行した.術後の心臓超音波検査では左室駆出率は39%と改善し,BNP 135 pg/mLと著明な改善を認めた.成長ホルモンもブドウ糖負荷試験で抑制を認めた.その後にBentall手術と上行大動脈置換術を行い,術後の経胸壁心臓超音波検査では左室駆出率が51%,左室拡張期径54 mmと著明に改善した.BNPも34.5 pg/mLと改善した.その後,心不全の増悪はなく経過している.先端巨大症性心筋症は稀な疾患であり,下垂体腫瘍に対する治療と大動脈弁閉鎖不全症に対する治療それぞれに治療効果が確認することができた症例であり,ここに提示する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.53.1076