48歳で初めて胸部大動脈瘤を指摘されたハイリスクの完全型Turner症候群の1例

Turner症候群はX染色体欠損により生じ,低身長・性腺機能異常をはじめ様々な合併症を伴い,心血管系の異常が生命予後を左右する.大動脈二尖弁・大動脈径拡大・大動脈縮窄は約半数の患者に合併し,若年での大動脈解離が問題となる.症例は48歳女性,10歳時にTurner症候群と診断された.無月経であったが,健康上大きなイベントなく経過し,健診にて胸部異常陰影を指摘されたため当院当科受診.CTにて上行から弓部大動脈に最大径50 mmの真性瘤と大動脈縮窄を認めた.エコーでは大動脈の弁輪拡大はなく,弁機能に異常はなかった.血圧の上下肢差なく,染色体検査は45,XOであった.手術時に大動脈は二尖弁と判明したが...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 50; no. 11; pp. 1217 - 1221
Main Authors 植野, 恭平, 滝浪, 学, 関, 晴永, 緑川, 博文, 菅野, 恵, 影山, 理恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.11.2018
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.50.1217

Cover

More Information
Summary:Turner症候群はX染色体欠損により生じ,低身長・性腺機能異常をはじめ様々な合併症を伴い,心血管系の異常が生命予後を左右する.大動脈二尖弁・大動脈径拡大・大動脈縮窄は約半数の患者に合併し,若年での大動脈解離が問題となる.症例は48歳女性,10歳時にTurner症候群と診断された.無月経であったが,健康上大きなイベントなく経過し,健診にて胸部異常陰影を指摘されたため当院当科受診.CTにて上行から弓部大動脈に最大径50 mmの真性瘤と大動脈縮窄を認めた.エコーでは大動脈の弁輪拡大はなく,弁機能に異常はなかった.血圧の上下肢差なく,染色体検査は45,XOであった.手術時に大動脈は二尖弁と判明したが,機能的問題は.上行大動脈置換のみ施行し,経過良好にて29日目に独歩退院となった.大動脈壁の病理所見は嚢胞性中膜壊死を疑う所見であった.Turner症候群の患者は体格が小さいため,大動脈径の評価ではASI(aortic size index)が用いられており,ASI>2.5 cm/m2では大動脈解離のリスクが非常に高くなる.大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧を合併する場合にはさらに危険とされている.本症例はASI 4.0 cm/m2であり,大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧を有していながらも,中年期まで無症状で経過した極めて稀な症例であると考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.50.1217