外傷性腹部大動脈急性閉塞に対して血栓除去術と大腿動脈─大腿動脈交叉バイパスを施行し救肢した1例

患者は68歳男性.ダンプカー同士の衝突事故による腹部のハンドル損傷,ショック状態でドクターヘリ搬送された.腸管,腸間膜損傷に加え,外傷性腹部大動脈閉塞,急性両下肢虚血を生じていた.緊急開腹止血,小腸部分切除後に血栓除去術を施行した.受傷6時間後に下肢血流は一時再開したが,直後に左下肢の再血栓閉塞が判明した.左総腸骨動脈瘤があり,再血栓除去術では閉塞のリスクが高いと判断し,右下肢を供血路とした大腿動脈─大腿動脈交叉バイパス術を追加した.左下肢血流は改善したが,再灌流に伴う筋腎代謝症候群により,高カリウム血症を呈したため,緊急持続的血液濾過透析を開始した.術後5日目に血清カリウム値は正常化したが,...

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Published in心臓 Vol. 54; no. 11; pp. 1272 - 1277
Main Authors 森河内, 萌, 衣笠, 由祐, 宮崎, 延裕, 塚田, 暁, 廣瀬, 聡一郎, 鳥家, 鉄平, 田井, 龍太, 手嶋, 英樹, 入江, 博之, 杭ノ瀬, 慶彦, 濱田, 雄一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.11.2022
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.54.1272

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Summary:患者は68歳男性.ダンプカー同士の衝突事故による腹部のハンドル損傷,ショック状態でドクターヘリ搬送された.腸管,腸間膜損傷に加え,外傷性腹部大動脈閉塞,急性両下肢虚血を生じていた.緊急開腹止血,小腸部分切除後に血栓除去術を施行した.受傷6時間後に下肢血流は一時再開したが,直後に左下肢の再血栓閉塞が判明した.左総腸骨動脈瘤があり,再血栓除去術では閉塞のリスクが高いと判断し,右下肢を供血路とした大腿動脈─大腿動脈交叉バイパス術を追加した.左下肢血流は改善したが,再灌流に伴う筋腎代謝症候群により,高カリウム血症を呈したため,緊急持続的血液濾過透析を開始した.術後5日目に血清カリウム値は正常化したが,急性腎障害による無尿状態であり,血液透析へ移行した.腎機能は徐々に改善し,術後55日目に透析離脱した.左下肢はコンパートメント症候群により運動機能障害を残したが,下肢切断は回避でき,術後62日目に転院となった.本症例は腸管損傷を伴う外傷性腹部大動脈閉塞に対し,血行再建および血液浄化で救命,救肢に至った1例であり報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.54.1272