電界曝露に伴うヒトの血液性状変化に関する基礎的検討 IV― 透明電極使用による電界曝露条件の改良
我々は, ELF(0-300Hz)電界の人体影響評価のため,電界曝露に伴うヒトの血流変化について検討を行ってきた.これまで,電界曝露直後に凝集・連鎖赤血球の割合が増加する傾向が確認された.そこで,この現象の機序解明のため,生理的変化の影響を受けないin vitroで実験的検討を行った. 当初は,顕微鏡下で視野の両端水平面に銅板電極を配置し,電界曝露時の赤血球を観測した.しかしこの方法では,電極を視野幅(数mm)以上離す必要があり,高電界の印加は難しかった.これに対し,平板上の透明電極をスライドガラス代わりに用いれば,試料厚み方向に電界印加が可能となる.血液試料は数十μm厚みのため,高電界の印加...
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Published in | Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual56; no. Abstract; p. S100 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本生体医工学会
2018
Japanese Society for Medical and Biological Engineering |
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ISSN | 1347-443X 1881-4379 |
DOI | 10.11239/jsmbe.Annual56.S100 |
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Summary: | 我々は, ELF(0-300Hz)電界の人体影響評価のため,電界曝露に伴うヒトの血流変化について検討を行ってきた.これまで,電界曝露直後に凝集・連鎖赤血球の割合が増加する傾向が確認された.そこで,この現象の機序解明のため,生理的変化の影響を受けないin vitroで実験的検討を行った. 当初は,顕微鏡下で視野の両端水平面に銅板電極を配置し,電界曝露時の赤血球を観測した.しかしこの方法では,電極を視野幅(数mm)以上離す必要があり,高電界の印加は難しかった.これに対し,平板上の透明電極をスライドガラス代わりに用いれば,試料厚み方向に電界印加が可能となる.血液試料は数十μm厚みのため,高電界の印加も比較的容易である.実験では,ITO(酸化インジウムスズ)電極を使用し,10名の被験者から採取した赤血球の凝集性を観測した.これにより,ヒト電界曝露実験で血流変化の見られた電界値(100 kV/m)での観測が実現された.まず,電界以外すべて同条件とした擬似曝露実験を行い,30分間の観測時間にわたり赤血球の分離状態に変化のないことを確かめた.次に,観測開始10分後から20分後の期間,電界曝露を行い赤血球の状態を調べた.その結果,電界曝露に伴い,凝集赤血球の割合が増加する現象が認められた(p<0.01-0.05).また,電界強度に対する用量反応性も確認された.これらの結果は,電界曝露に伴う血流変化が,生理的変化だけでなく血液性状の物理的変化にも起因する可能性を示唆するものと考えられる. |
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ISSN: | 1347-443X 1881-4379 |
DOI: | 10.11239/jsmbe.Annual56.S100 |