トイレを介した院内感染の可能性に関する基礎的検討

現在、医療施設では、スタンダードプリコーションの導入や院内感染対策室などを設けて、院内感染の対策に当たっている。しかし、ノロウイルスや薬剤耐性黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌などに代表される院内感染が毎年報告されているのが現状である。これらの感染症の感染経路の一つとして、トイレを介した感染経路が考えられているが、その可能性について詳細に調べられている例はほとんどない。そこで本研究では、トイレを介した院内感染の可能性について基礎的検討をおこなった。検討にあたって、実際の洋式便器を使用して院内のトイレと同じような模擬トイレを作製した。まず、トイレの貯水タンク内の水を流した際に、どの程度便器周辺に水滴が...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual56; no. Abstract; p. S431
Main Authors 相川, 武司, 黒田, 聡, 菅原, 俊継, 印藤, 智一, 渡邉, 翔太郎, 木村, 主幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual56.S431

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Summary:現在、医療施設では、スタンダードプリコーションの導入や院内感染対策室などを設けて、院内感染の対策に当たっている。しかし、ノロウイルスや薬剤耐性黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌などに代表される院内感染が毎年報告されているのが現状である。これらの感染症の感染経路の一つとして、トイレを介した感染経路が考えられているが、その可能性について詳細に調べられている例はほとんどない。そこで本研究では、トイレを介した院内感染の可能性について基礎的検討をおこなった。検討にあたって、実際の洋式便器を使用して院内のトイレと同じような模擬トイレを作製した。まず、トイレの貯水タンク内の水を流した際に、どの程度便器周辺に水滴が飛散するのか検討を行った。その結果、便器周辺の床や蓋、便座に水滴が飛散することがわかった。次に、排便後の最も単純なモデルとして、便器内に溜まっている水にのみ非病原性大腸菌を接種した。その後、同様にトイレの貯水タンク内の水を流した。その結果、飛散した水滴中に便器由来の大腸菌が含まれていることが確認された。ただし、飛散した水滴全てに便器由来の大腸菌が含まれているわけではなかった。以上の知見は、トイレを介した院内感染につながる可能性を示しているものである。今後、飛散した水滴中に含まれている病原微生物がどのように院内感染につながっていくのか検討をおこない、院内感染予防策を考えていく予定である。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S431