特集「次世代のワクチン製剤」について

18世紀末イギリスのエドワード・ジェンナーによる天然痘予防方法から始まったワクチンは, 200年あまりの間に数多くが実用化され世界中の公衆衛生の向上に多大に貢献している. 19世紀以降の世界人口の爆発的増加の背景には, 工業化がもたらした生活環境の改善に加えて, ワクチン接種による感染症の予防があろう. またワクチンの劇的な効果に興味を抱いた研究者たちにより作用機序の解明が精力的に進められた結果, 免疫学という広大な学問分野の発見に辿り着き, 医療の発展にも寄与し続けている. 従来, ワクチンといえば上述したような感染症に対する予防介入手段というのが一般的な捉え方であったように思う. しかしな...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in薬剤学 Vol. 76; no. 1; pp. 2 - 3
Main Author 道中, 康也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬剤学会 2016
日本薬剤学会
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:18世紀末イギリスのエドワード・ジェンナーによる天然痘予防方法から始まったワクチンは, 200年あまりの間に数多くが実用化され世界中の公衆衛生の向上に多大に貢献している. 19世紀以降の世界人口の爆発的増加の背景には, 工業化がもたらした生活環境の改善に加えて, ワクチン接種による感染症の予防があろう. またワクチンの劇的な効果に興味を抱いた研究者たちにより作用機序の解明が精力的に進められた結果, 免疫学という広大な学問分野の発見に辿り着き, 医療の発展にも寄与し続けている. 従来, ワクチンといえば上述したような感染症に対する予防介入手段というのが一般的な捉え方であったように思う. しかしながら近年では悪性腫瘍やアルツハイマー型痴呆などをターゲットとした, 予防ではなく疾患治療用ワクチンが盛んに研究されており, また花粉症に対する舌下免疫療法が確立されるなど, 新たな展開がなされている. 加えて製剤学的見地からも従来型の注射剤から, 痛みのない経口・経粘膜型のワクチンデリバリー手法の研究や, 経皮からのワクチンデリバリー製剤の開発がホットなトピックとなっている.
ISSN:0372-7629
2188-3149
DOI:10.14843/jpstj.76.2