サリチル酸塩の電気刺激誘発耳音響放射に及ぼす影響について

サリチル酸塩は可逆性の聴覚域値上昇を生じ, 単離外有毛細胞を使用した実験では電位依存性運動能を低下させることが知られている. しかし, 生体内における聴覚域値上昇の機序に関しては不明の点も多い. 一方, 蝸牛を交流電流にて刺激すると, 蝸牛外有毛細胞の電位依存性運動能に起因すると考えられる音響現象を外耳道で記録することができ, 生体内における蝸牛電気機械変換を観察する有用な指標となることが示唆されている. そこで, サリチル酸塩の外有毛細胞運動能に対する生体内における影響について検討するため, サリチル酸ナトリウム500mg/kgをモルモットに静脈内投与し, その前後で正円窓を電気刺激して誘発...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 102; no. 10; pp. 1184 - 1189
Main Authors 森, 貴稔, 吉田, 雅文, 牧嶋, 和見, 藤村, 和伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 1999
日本耳鼻咽喉科学会
Subjects
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.102.1184

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Summary:サリチル酸塩は可逆性の聴覚域値上昇を生じ, 単離外有毛細胞を使用した実験では電位依存性運動能を低下させることが知られている. しかし, 生体内における聴覚域値上昇の機序に関しては不明の点も多い. 一方, 蝸牛を交流電流にて刺激すると, 蝸牛外有毛細胞の電位依存性運動能に起因すると考えられる音響現象を外耳道で記録することができ, 生体内における蝸牛電気機械変換を観察する有用な指標となることが示唆されている. そこで, サリチル酸塩の外有毛細胞運動能に対する生体内における影響について検討するため, サリチル酸ナトリウム500mg/kgをモルモットに静脈内投与し, その前後で正円窓を電気刺激して誘発される耳音響放射を観察した. その結果, 同じ電極より誘導した蝸牛神経複合活動電位 (CAP) は13~22dBの高音漸傾型の域値上昇を示し, 電気刺激による耳音響放射の出力は5kHz刺激で約4dB, 8kHzでは約12dB減少した. サリチル酸塩は, 生体内においても外有毛細胞の運動能を低下させ, 聴覚域値の上昇を起こしているものと考えられた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.102.1184