20年前にてんかんと診断後,統合失調症を合併し,鑑別に難渋した先天性QT延長症候群の1例
症例は37歳,女性.14歳時より痙攣発作が出現し,17歳時にてんかんと診断された.22歳時より幻覚・妄想が出現し,てんかん性精神病として薬物加療が開始された.今回,精神症状の増悪に対し,外来でスルトプリドを追加したところ,痙攣発作を繰り返し認めたため,かかりつけの精神神経科専門病院に入院となった.入院後のモニター心電図でQT延長に伴うtorsade de pointes(TdP)を認め,不整脈加療のため当院に転院となった.当初,薬剤性のQT延長症候群(long QT syndrome;LQTS)を疑い,QT延長をきたす被疑薬(リスぺリドンとスルトプリド)を中止したが,QT延長は改善せずTdPを...
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Published in | 心臓 Vol. 45; no. 9; pp. 1124 - 1128 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.09.2013
日本心臓財団・日本循環器学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.45.1124 |
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Summary: | 症例は37歳,女性.14歳時より痙攣発作が出現し,17歳時にてんかんと診断された.22歳時より幻覚・妄想が出現し,てんかん性精神病として薬物加療が開始された.今回,精神症状の増悪に対し,外来でスルトプリドを追加したところ,痙攣発作を繰り返し認めたため,かかりつけの精神神経科専門病院に入院となった.入院後のモニター心電図でQT延長に伴うtorsade de pointes(TdP)を認め,不整脈加療のため当院に転院となった.当初,薬剤性のQT延長症候群(long QT syndrome;LQTS)を疑い,QT延長をきたす被疑薬(リスぺリドンとスルトプリド)を中止したが,QT延長は改善せずTdPを繰り返した.かつて通院していた病院より心電図結果を収集したところ,以前よりQT延長を示していたことが判明した.また,遺伝子検査でKCNH2遺伝子のミスセンス変異を認めたことから,先天性LQTSと診断した.繰り返すTdPに対して,薬物加療とともに植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)植え込み術を施行した.LQTSではTdP合併時に痙攣を認めることがあり,てんかん発作と類似しているため,てんかんと誤診された報告が散見される.LQTSは診断・治療の遅れが致死的となる不整脈であり,痙攣患者では鑑別が不可欠である.近年,イオンチャネル病として,LQTSとてんかんや統合失調症との関連を示唆する報告もあり,診断に十分に留意する必要がある. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.45.1124 |