日本の狩猟及び鳥獣保護制度の変化と2014年の鳥獣保護法改正
狩猟の主な目的は時代とともに変化してきた。近代に入って重要な位置を占めた商業的狩猟の時代はすでに終わり,被害防除のための捕獲の拡大と,レクリエーション狩猟の縮小が現在の特徴となっている。明治時代初期に整備が始まった狩猟法とそれを引き継いだ鳥獣保護法は鳥獣の捕獲に対する規制法であったが,1999年の改正以降性格が変わりつつある。それは,生物多様性の保全を目的とした自然保護法的な性格と,計画制度や事業制度の拡充による科学的計画的な事業の推進という性格が強まっていることである。2014年の鳥獣保護法の改正は,「保護」と「管理」を対立的な狭い概念として法律的に定義したという問題点を持つ一方,個体群コン...
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Published in | 日本野生動物医学会誌 Vol. 21; no. 3; pp. 73 - 79 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本野生動物医学会
30.04.2016
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Subjects | |
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ISSN | 1342-6133 2185-744X |
DOI | 10.5686/jjzwm.21.73 |
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Summary: | 狩猟の主な目的は時代とともに変化してきた。近代に入って重要な位置を占めた商業的狩猟の時代はすでに終わり,被害防除のための捕獲の拡大と,レクリエーション狩猟の縮小が現在の特徴となっている。明治時代初期に整備が始まった狩猟法とそれを引き継いだ鳥獣保護法は鳥獣の捕獲に対する規制法であったが,1999年の改正以降性格が変わりつつある。それは,生物多様性の保全を目的とした自然保護法的な性格と,計画制度や事業制度の拡充による科学的計画的な事業の推進という性格が強まっていることである。2014年の鳥獣保護法の改正は,「保護」と「管理」を対立的な狭い概念として法律的に定義したという問題点を持つ一方,個体群コントロールを促進するための指定管理鳥獣捕獲等事業や,事業の適切な担い手確保を意図した認定鳥獣捕獲等事業者制度が創設されるなど,時代の要請に応える内容となっている。改正法の実効性の評価はまだできないが,今後の展開を期待したい。ただし,この改正はやはり対症療法の域に止まっており,現在の社会的状況は鳥獣保護管理の基本的な枠組みの再検討を必要としている。 |
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ISSN: | 1342-6133 2185-744X |
DOI: | 10.5686/jjzwm.21.73 |