急性下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術

●要  約:【背景】下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術の有効性は数多く報告されているが,長期成績に関してはいまだ明らかではない.【目的】腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術の長期成績を検討すること.【方法】2000年12月から2011年2月の間に当院にて急性下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対しステント留置を行った20例を対象とした.腸骨静脈圧迫症候群の診断は,十分な血栓溶解療法を行った後でも静脈造影検査および血管内超音波検査(IVUS)にて高度狭窄を認めるか圧較差が2 mmHgを超えるものとした.ステント留置後の初期成績および慢性期ステント...

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Published in静脈学 Vol. 23; no. 3; pp. 283 - 293
Main Authors 中村, 茂, 舩津, 篤史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本静脈学会 2012
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ISSN0915-7395
2186-5523
DOI10.7134/phlebol.23.283

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Summary:●要  約:【背景】下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術の有効性は数多く報告されているが,長期成績に関してはいまだ明らかではない.【目的】腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術の長期成績を検討すること.【方法】2000年12月から2011年2月の間に当院にて急性下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対しステント留置を行った20例を対象とした.腸骨静脈圧迫症候群の診断は,十分な血栓溶解療法を行った後でも静脈造影検査および血管内超音波検査(IVUS)にて高度狭窄を認めるか圧較差が2 mmHgを超えるものとした.ステント留置後の初期成績および慢性期ステント開存率,臨床経過について検討した.【結果】ステント留置は全例で施行できた.院内死亡や症候性肺塞栓症の合併は認めなかった.2例で早期ステント血栓症を認めたため,引き続き血栓吸引を施行したが1例で再灌流が得られなかった.結果,19例で症状は改善し,退院時にステント開存が確認され,全例でワーファリンを導入し退院した.17例(90%)で退院後の慢性期経過観察が可能であった.平均50カ月間の臨床経過中に1例で突然死を認めたが,他の16例では深部静脈血栓症,肺塞栓症とも認めなかった.ステント開存の評価は静脈造影あるいはエコー検査にて施行し,1例でステントクラッシュによる再狭窄を認めたが(再狭窄率6.2%),他の例ではステントは開存し,再狭窄は認めなかった.【結語】急性下肢深部静脈血栓症を伴った腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術は血栓処理後に安全に施行でき,かつ症状改善に有効であった.少数での検討ではあるが,慢性期成績も良好であった.
ISSN:0915-7395
2186-5523
DOI:10.7134/phlebol.23.283