転移性肝癌との鑑別が困難であった膵頭十二指腸切除後肝炎症性偽腫瘍の1例

症例は70歳,女性.66歳時に膵頭部癌に対してgemcitabine + S-1療法後,門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した (ypT3,ypN1a,M0,ypStage II B).術4カ月後に胆管炎,多発肝膿瘍を認めたため,S7に対する膿瘍ドレナージと抗菌薬加療を行った.その後は胆管炎や肝膿瘍の発症を認めず経過した.術4年6カ月後の造影CTにて肝S8に35mm大のリング状造影効果を伴う腫瘤を認め,転移性肝癌もしくは肝内胆管癌を疑った.他に遠隔転移は認めず,開腹下肝S8部分切除術を施行した.病理組織学的診断は炎症性偽腫瘍 (inflammatory pseudotumor:...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 11; pp. 2010 - 2015
Main Authors 栗原, 重明, 村田, 哲洋, 田嶋, 哲三, 高台, 真太郎, 清水, 貞利, 金沢, 景繁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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Summary:症例は70歳,女性.66歳時に膵頭部癌に対してgemcitabine + S-1療法後,門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した (ypT3,ypN1a,M0,ypStage II B).術4カ月後に胆管炎,多発肝膿瘍を認めたため,S7に対する膿瘍ドレナージと抗菌薬加療を行った.その後は胆管炎や肝膿瘍の発症を認めず経過した.術4年6カ月後の造影CTにて肝S8に35mm大のリング状造影効果を伴う腫瘤を認め,転移性肝癌もしくは肝内胆管癌を疑った.他に遠隔転移は認めず,開腹下肝S8部分切除術を施行した.病理組織学的診断は炎症性偽腫瘍 (inflammatory pseudotumor:IPT)であった.肝IPTは稀な良性疾患で,画像所見は転移性肝癌や肝内胆管癌と類似しており,術前の鑑別は困難とされている.PD術後の肝IPT報告例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.2010