心臓カテーテル検査後にアナフィラクトイド紫斑病を急性発症した1例

症例は61歳,女性.34歳時僧帽弁置換術を施行.2010年3月,家族と口論後に胸部圧迫感が出現したため,当科を受診し,急性冠症候群が疑われ緊急心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影で器質的有意狭窄は認められなかったが,左室造影でたこつぼ様に心尖部側の壁運動が著明に低下していた.第12病日にエルゴノビンを用いた冠攣縮誘発試験を施行したところ,左冠動脈で多発性に攣縮が誘発され,冠攣縮性狭心症と診断し合併症を起こすことなくカテーテル検査を終了した.しかし,帰室直後から嘔吐,腹痛,粘血便といった多彩な消化器症状が出現し,シース抜去のため止血処置を施行した右下肢に紫斑が急速に拡大した.緊急下部消化管内...

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Published in心臓 Vol. 44; no. 9; pp. 1173 - 1179
Main Authors 下川, 宏明, 松本, 泰治, 高橋, 潤, 伊藤, 健太, 伊藤, 愛剛, 安田, 聡, 前田, 恵, 円谷, 隆治, 武田, 守彦, 中山, 雅晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.09.2012
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.44.1173

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Summary:症例は61歳,女性.34歳時僧帽弁置換術を施行.2010年3月,家族と口論後に胸部圧迫感が出現したため,当科を受診し,急性冠症候群が疑われ緊急心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影で器質的有意狭窄は認められなかったが,左室造影でたこつぼ様に心尖部側の壁運動が著明に低下していた.第12病日にエルゴノビンを用いた冠攣縮誘発試験を施行したところ,左冠動脈で多発性に攣縮が誘発され,冠攣縮性狭心症と診断し合併症を起こすことなくカテーテル検査を終了した.しかし,帰室直後から嘔吐,腹痛,粘血便といった多彩な消化器症状が出現し,シース抜去のため止血処置を施行した右下肢に紫斑が急速に拡大した.緊急下部消化管内視鏡検査では,び漫性に大腸粘膜浮腫,地図状発赤,粘膜下出血が認められた.さらに下肢紫斑部皮膚生検において白血球破砕性血管炎の所見が得られ,血小板数や補体価の低下を伴っていなかったことからアナフィラクトイド紫斑病の確定診断にいたった.その後,安静・絶食・補液による保存的治療のみで2週間のうちに消化器症状,紫斑ともに自然に軽快した.今回,われわれは心臓カテーテル検査後に急性発症した紫斑と消化器症状に対してアナフィラクトイド紫斑病と確定診断し得た症例を経験したので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.44.1173