原発性肺癌心筋転移に免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎を生じた1例

症例は67歳,女性.体重減少と左肩甲骨周囲の痛みを自覚し近医を受診.精査の結果,左上葉原発の肺扁平上皮癌および多発脳転移と診断され,当院に紹介入院となった.PET-CTで左心室に18F-FDG高集積を認め,心エコー図では左室前壁中部の局所的な壁肥厚と壁運動異常を認めた.また同部位は内腔・外膜側へ突出し,心筋転移を疑った.心臓MRIでは左室前壁中部に心筋壁の不整な肥厚があり,同部位に境界不明瞭な造影される腫瘤を認めた.進行肺癌に対しカルボプラチン,ナブパクリタキセル,ペムブロリズマブによる化学療法が開始された.化学療法施行1サイクル後に施行した心エコー図で腫瘤の著明な縮小を確認したため診断に矛盾...

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Published in心臓 Vol. 55; no. 7; pp. 672 - 680
Main Authors 西海, 朋子, 野原, 淳, 鮎川, 宏之, 山田, 幸子, 小菅, 邦彦, 森, 真奈美, 齊城, 順子, 宮川, 祐子, 大澤, 漢宇, 室井, 千香子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.07.2023
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.55.672

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Summary:症例は67歳,女性.体重減少と左肩甲骨周囲の痛みを自覚し近医を受診.精査の結果,左上葉原発の肺扁平上皮癌および多発脳転移と診断され,当院に紹介入院となった.PET-CTで左心室に18F-FDG高集積を認め,心エコー図では左室前壁中部の局所的な壁肥厚と壁運動異常を認めた.また同部位は内腔・外膜側へ突出し,心筋転移を疑った.心臓MRIでは左室前壁中部に心筋壁の不整な肥厚があり,同部位に境界不明瞭な造影される腫瘤を認めた.進行肺癌に対しカルボプラチン,ナブパクリタキセル,ペムブロリズマブによる化学療法が開始された.化学療法施行1サイクル後に施行した心エコー図で腫瘤の著明な縮小を確認したため診断に矛盾しないと考えられた.治療開始28日後に施行した心エコー図では両心室のびまん性収縮能低下を認めた.高感度トロポニンIも高値であり,心筋炎を強く疑い心筋生検を施行した.心筋組織には炎症細胞浸潤を認め,ペムブロリズマブによる心筋炎と診断した.高用量のステロイド投与により6週間後の心エコー図では心機能の回復を認めた.肺癌の心筋転移に対してペムブロリズマブを含む化学療法を施行し,心筋炎を生じた症例を経験した.一連の診断と治療に心エコー図による評価が有用であった.がん治療において心エコー図検査を含めた経時的なモニタリングは重要である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.55.672