緊急帝王切開術後に診断に至った感染性心内膜炎の1例

妊娠中の感染性心内膜炎の発症は0.006〜0.0125%と報告されており,非常にまれである.感染性心内膜炎は弁膜や大血管内に疣腫を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害などの多彩な症状を引き起こす全身性敗血症性疾患である.発症すると母児ともに極めて重症度が高く早急な対応が必要となるが,臨床症状は発熱や動悸など非特異的なものが多く,診断が遅れることがある.妊娠中に感染性心内膜炎の診断に至った場合は,母体の循環動態や児の成熟度などを総合的に判断し,母体の治療と分娩時期を検討する必要がある.妊娠中の不明熱に対して帝王切開術を行った後に,感染性心内膜炎と診断した1例を経験したので報告する.症例は28歳,2妊...

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Published in日本周産期・新生児医学会雑誌 Vol. 58; no. 2; pp. 341 - 345
Main Authors 森岡, 裕彦, 山﨑, 友美, 八幡, 美穂, 宇山, 拓澄, 綱掛, 恵, 大森, 由里子, 寺岡, 有子, 古宇, 家正, 向井, 百合香, 工藤, 美樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本周産期・新生児医学会 2022
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Summary:妊娠中の感染性心内膜炎の発症は0.006〜0.0125%と報告されており,非常にまれである.感染性心内膜炎は弁膜や大血管内に疣腫を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害などの多彩な症状を引き起こす全身性敗血症性疾患である.発症すると母児ともに極めて重症度が高く早急な対応が必要となるが,臨床症状は発熱や動悸など非特異的なものが多く,診断が遅れることがある.妊娠中に感染性心内膜炎の診断に至った場合は,母体の循環動態や児の成熟度などを総合的に判断し,母体の治療と分娩時期を検討する必要がある.妊娠中の不明熱に対して帝王切開術を行った後に,感染性心内膜炎と診断した1例を経験したので報告する.症例は28歳,2妊1産.妊娠35週に発熱と腹痛を主訴に受診した.血液培養検査でグラム陽性連鎖球菌が判明した.発熱と強い腹痛を認めたことからA群溶連菌感染症の可能性を考え,緊急帝王切開術を施行した.帝王切開術後,起因菌がStreptococcus gallolyticusであったことが判明した.聴診で心雑音を聴取し,心臓超音波検査では僧帽弁に疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断した.帝王切開術後2日目に僧帽弁形成術を施行した.術後はペニシリンGを長期投与し,経過は良好であった.感染性心内膜炎は早急な診断と適切な治療を行うことが重要である.妊娠中に不明熱を認めた場合には,非妊娠時と同様に感染性心内膜炎も鑑別に挙げ,視診や聴診を含め十分な身体診察,原因検索を行うことが重要である.
ISSN:1348-964X
2435-4996
DOI:10.34456/jjspnm.58.2_341