マラリア原虫の媒介蚊体内における受精・発育の分子基盤

マラリアは, 蚊によって媒介されて人から人へと感染が広まる寄生虫疾患である. 未だ, 世界中で年間40万人を超える人々がマラリアを原因にして亡くなっている(WHO, 2017). 原因病原体であるマラリア原虫は, ハマダラカによってヒトからヒトへと媒介される. 感染したヒトから吸血したハマダラカの消化管内でマラリア原虫の生殖体が受精し, 接合体が消化管壁を通り抜け, 基底膜上に形成されたオーシスト内でスポロゾイトと呼ばれる侵入型原虫へと分化する. スポロゾイトは唾液腺に選択的に侵入することで, 次の吸血の際に唾液とともにヒトの皮膚内に運ばれる. マラリア対策としては, 感染者を抗マラリア薬で治...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 69; no. 3; pp. 153 - 154
Main Authors 石野, 智子, 高島, 英造, 鳥居, 本美, 橘, 真由美, 坪井, 敬文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 25.09.2018
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ISSN0424-7086
2185-5609
DOI10.7601/mez.69.153

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Summary:マラリアは, 蚊によって媒介されて人から人へと感染が広まる寄生虫疾患である. 未だ, 世界中で年間40万人を超える人々がマラリアを原因にして亡くなっている(WHO, 2017). 原因病原体であるマラリア原虫は, ハマダラカによってヒトからヒトへと媒介される. 感染したヒトから吸血したハマダラカの消化管内でマラリア原虫の生殖体が受精し, 接合体が消化管壁を通り抜け, 基底膜上に形成されたオーシスト内でスポロゾイトと呼ばれる侵入型原虫へと分化する. スポロゾイトは唾液腺に選択的に侵入することで, 次の吸血の際に唾液とともにヒトの皮膚内に運ばれる. マラリア対策としては, 感染者を抗マラリア薬で治療するのに加えて, 防虫剤の散布や薬剤浸透蚊帳の使用促進などにより, マラリア原虫の生活環を蚊のステージで断つことが功を奏している. 最近, 蚊の中の原虫を標的としたワクチン(伝搬阻止ワクチン)の開発が期待されている.
ISSN:0424-7086
2185-5609
DOI:10.7601/mez.69.153