大動脈弁置換後に急性緑内障発作を合併した1例

心臓手術後に発生する視機能障害は稀ではあるが一旦発生すると治療に難渋することがある.今回大動脈弁置換術後に急性緑内障発作を合併した症例を経験した.症例は65歳男性,前日野球をしていた際に胸部苦悶感を自覚し外来を受診した.患者は2年前に健診で心雑音の指摘をうけ当院受診,その際に心臓カテーテル検査を行い冠動脈造影では異常を認めず,大動脈弁狭窄を認めたが左室-大動脈間圧較差23 mmHgであったため経過観察とされた.今回心エコーでは大動脈弁最大血流速度4 m/sの大動脈弁狭窄症を認め心電図では左室肥大とV1-3でST上昇,加えて逸脱酵素の上昇を認めた.同日入院,保存的治療を行い病状の改善をみて再度心...

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Published in心臓 Vol. 54; no. 8; pp. 928 - 931
Main Authors 加藤, 能利子, 曽川, 正和, 田邉, 友暁, 丁, 毅文, 建部, 祥, 栃木, 秀一, 山﨑, 琢磨, 齋藤, 真人, 田岡, 誠, 丁, 栄市
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.08.2022
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.54.928

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Summary:心臓手術後に発生する視機能障害は稀ではあるが一旦発生すると治療に難渋することがある.今回大動脈弁置換術後に急性緑内障発作を合併した症例を経験した.症例は65歳男性,前日野球をしていた際に胸部苦悶感を自覚し外来を受診した.患者は2年前に健診で心雑音の指摘をうけ当院受診,その際に心臓カテーテル検査を行い冠動脈造影では異常を認めず,大動脈弁狭窄を認めたが左室-大動脈間圧較差23 mmHgであったため経過観察とされた.今回心エコーでは大動脈弁最大血流速度4 m/sの大動脈弁狭窄症を認め心電図では左室肥大とV1-3でST上昇,加えて逸脱酵素の上昇を認めた.同日入院,保存的治療を行い病状の改善をみて再度心臓カテーテル検査を行い左室-大動脈間圧較差56 mmHgと大動脈弁狭窄の進行を認め,1カ月後に手術(機械弁による大動脈弁置換)を行った.第3病日に左下肢のしびれ,右手指が動かしにくいという症状出現,脳虚血発作を疑い治療を開始したが第4病日には顕著な視力低下と散瞳を認めた.第5病日に総合病院眼科受診,眼圧上昇(40-50 mmHg)を認め急性緑内障発作と診断された.ピロカルピン点眼では眼圧低下が得られず同日レーザー虹彩切開術をうけ,眼圧は正常化し視機能は保持された.本症例を通して術後の視機能障害でも稀な急性緑内障発作,さらに心筋梗塞で発症した大動脈弁狭窄症に関して考察を加えた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.54.928