てんかんを合併した先天性QT延長症候群の母児例

先天性QT延長症候群(LQTS)は致死性不整脈を生じ突然死をきたす症候群であり,乳幼児突然死症候群の原因の一つである.妊婦であれば分娩後の心停止や失神などのリスクも高いとされている.母は37歳初産婦.てんかんのためカルバマゼピンを内服していた.妊娠21週時に胎児心エコーで両大血管右室起始,肺動脈狭窄と診断した.妊娠31週時に胎児徐脈,心室期外収縮(PVC),非持続性心室頻拍を認めたため,硫酸マグネシウム投与を開始し,胎児PVCの減少を認めた.その後に施行した心電図でLQTSと診断した.帝王切開で出産後,ビソプロロール,メキシレチン投与を開始した.患児は在胎36週6日2382 gで出生し,著明な...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 52; no. 6; pp. 637 - 643
Main Authors 藤原, 舞, 杉野, 充伸, 村岡, 裕司, 浦山, 耕太郎, 田原, 昌博, 森田, 理沙, 大野, 聖子, 堀江, 稔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.06.2020
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.52.637

Cover

More Information
Summary:先天性QT延長症候群(LQTS)は致死性不整脈を生じ突然死をきたす症候群であり,乳幼児突然死症候群の原因の一つである.妊婦であれば分娩後の心停止や失神などのリスクも高いとされている.母は37歳初産婦.てんかんのためカルバマゼピンを内服していた.妊娠21週時に胎児心エコーで両大血管右室起始,肺動脈狭窄と診断した.妊娠31週時に胎児徐脈,心室期外収縮(PVC),非持続性心室頻拍を認めたため,硫酸マグネシウム投与を開始し,胎児PVCの減少を認めた.その後に施行した心電図でLQTSと診断した.帝王切開で出産後,ビソプロロール,メキシレチン投与を開始した.患児は在胎36週6日2382 gで出生し,著明なQT延長とPVC多発を認めた.硫酸マグネシウム投与を開始しPVCは減少した.その後ビソプロロール,メキシレチン投与を開始した.姑息術後,1歳0カ月時に心内修復術(心室中隔欠損パッチ閉鎖,肺動脈狭窄解除)を施行した.1歳11カ月時にてんかんを発症したため,カルバマゼピン投与を開始した.遺伝子解析で母児ともにKCNH2変異(N629T)を認め,LQTS2型と診断した.けいれん・失神の鑑別にてんかんやLQTSなどの遺伝性不整脈などが挙げられるが,両者の合併も稀だが存在しており,同じイオンチャネル異常の関連が示唆されている.胎内発症のLQTSは突然死のリスクがあるともされており,神経専門医を含めた包括的で慎重な管理が重要である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.52.637