腎動脈破裂で発症し,次世代シークエンサーを用いて診断に至った血管型エーラス・ダンロス症候群の1例

症例は39歳,女性.深夜に突然の腹痛と右背部痛を主訴に当院循環器内科へ緊急搬送された.CTでは,右腎動脈瘤と後腹膜出血の他に複数の血管病変の合併が認められ,血管脆弱性が示唆された.母親が出産後に大動脈破裂で死亡している.そのため,血管病変治療と並行し,遺伝性結合組織疾患を疑い次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子解析を行った.後腹膜出血を伴う腎動脈瘤に対してコイル塞栓を施行し,成功した.同時に中心静脈路確保のため右内頸静脈から挿入を試みた際に動脈穿刺が疑われたため,抜去し直ちに圧迫止血を施行したが,仮性動脈瘤および右椎骨静脈と鎖骨下動脈シャント形成を合併した.経過観察中にNGSを用いた遺...

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Published in心臓 Vol. 51; no. 9; pp. 949 - 955
Main Authors 小板橋, 紀通, 渋谷, 圭, 中野, 考英, 長坂, 崇司, 古庄, 知己, 倉林, 正彦, 宮崎, 将也, 山口, 智美, 梅山, 敦, 佐野, 幸恵, 佐藤, 万基人, 船田, 竜一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.09.2019
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.51.949

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Summary:症例は39歳,女性.深夜に突然の腹痛と右背部痛を主訴に当院循環器内科へ緊急搬送された.CTでは,右腎動脈瘤と後腹膜出血の他に複数の血管病変の合併が認められ,血管脆弱性が示唆された.母親が出産後に大動脈破裂で死亡している.そのため,血管病変治療と並行し,遺伝性結合組織疾患を疑い次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子解析を行った.後腹膜出血を伴う腎動脈瘤に対してコイル塞栓を施行し,成功した.同時に中心静脈路確保のため右内頸静脈から挿入を試みた際に動脈穿刺が疑われたため,抜去し直ちに圧迫止血を施行したが,仮性動脈瘤および右椎骨静脈と鎖骨下動脈シャント形成を合併した.経過観察中にNGSを用いた遺伝子解析の結果から血管型エーラス・ダンロス症候群(vEDS)と確定診断した.仮性動脈瘤は増大傾向であり,塞栓術によるシャント閉塞術を行った.術後合併症なく退院に至っている.vEDSは極端な血管脆弱性から,血管合併症の治療には細心の注意を払う必要があることが報告されている.本例はNGSを用いたvEDSの迅速な確定診断が,追加の血管内治療の選択に有用であった症例であり,報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.949