Y字型人工血管側枝を代替アクセスルートとした経カテーテル的大動脈弁置換術
症例は84歳男性.70歳時に前医にて冠動脈バイパス術を施行された.その際,中等度大動脈弁狭窄症を認め,保存的加療の方針となった.今回,うっ血性心不全のため前医に入院し,経胸壁心エコー図にて高度大動脈弁狭窄症と診断された.同時に,最大短径58 mmの腹部大動脈瘤,および両側腸骨動脈の高度狭窄病変を認めた.包括的治療を目的として当院に紹介された.ハートチームカンファレンスで治療方針を検討し,腹部大動脈瘤と腸骨動脈領域末梢動脈疾患に対してY字型人工血管置換術を行い,同時に大動脈弁狭窄症に対してY字型人工血管を代替アクセスルートとした経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を施行する方針とした.手術は...
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Published in | 心臓 Vol. 52; no. 6; pp. 615 - 619 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.06.2020
日本心臓財団・日本循環器学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.52.615 |
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Summary: | 症例は84歳男性.70歳時に前医にて冠動脈バイパス術を施行された.その際,中等度大動脈弁狭窄症を認め,保存的加療の方針となった.今回,うっ血性心不全のため前医に入院し,経胸壁心エコー図にて高度大動脈弁狭窄症と診断された.同時に,最大短径58 mmの腹部大動脈瘤,および両側腸骨動脈の高度狭窄病変を認めた.包括的治療を目的として当院に紹介された.ハートチームカンファレンスで治療方針を検討し,腹部大動脈瘤と腸骨動脈領域末梢動脈疾患に対してY字型人工血管置換術を行い,同時に大動脈弁狭窄症に対してY字型人工血管を代替アクセスルートとした経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を施行する方針とした.手術は,腹部大動脈人工血管置換術に引き続き,人工血管側枝よりバルーン拡張型人工心臓弁SAPIEN 3 29 mmによるTAVIを行い,合併症なく治療を終了した.術後経過は良好であり,術後20日目に自宅退院した.本症例では,下肢末梢動脈疾患と腹部大動脈瘤を合併した大動脈弁狭窄症に対して,まず,Y字型人工血管置換術を行い,次にY字型人工血管からのアクセスでTAVIを施行した.限られた状況下においては,Y字型人工血管はTAVIの新たな代替アクセスルートとなり得る可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.52.615 |