野生アライグマからのEscherichia albertiiの検出および分離における選択増菌培地の有用性評価

「要約」新興人獣共通感染性食中毒細菌E. albertiiの選択増菌培地は, 少数のE. albertiiしか存在しない検体から本菌を分離する上で大きな力を発揮する. しかしながら, これらは特定の分離株を用いた接種実験により評価されたものが多く, 自然汚染のE. albertiiをどの程度培養でき, それをどの程度効率的に分離できるのかについては不明な点が多い. 本研究では, 2種類の選択増菌培地 (CTD-TSB, NCT-mTSB) を用いてアライグマの保菌調査を行うことで, それぞれの選択増菌培地が本菌の検出および分離に与える影響を明らかにした. 非選択培養では, 増菌培養しない直接検...

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Published in日本食品微生物学会雑誌 Vol. 42; no. 2; pp. 34 - 43
Main Authors 日根野谷 淳, 畑中 律敏, Awasthi Sharda Prasad, 山﨑 伸二, 植田 麻友香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本食品微生物学会 30.06.2025
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ISSN1340-8267
1882-5982
DOI10.5803/jsfm.42.34

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Summary:「要約」新興人獣共通感染性食中毒細菌E. albertiiの選択増菌培地は, 少数のE. albertiiしか存在しない検体から本菌を分離する上で大きな力を発揮する. しかしながら, これらは特定の分離株を用いた接種実験により評価されたものが多く, 自然汚染のE. albertiiをどの程度培養でき, それをどの程度効率的に分離できるのかについては不明な点が多い. 本研究では, 2種類の選択増菌培地 (CTD-TSB, NCT-mTSB) を用いてアライグマの保菌調査を行うことで, それぞれの選択増菌培地が本菌の検出および分離に与える影響を明らかにした. 非選択培養では, 増菌培養しない直接検出よりも検出率を向上させることができるものの, 分離率 (5.0%) が低下してしまうことが欠点としてあった. CTD-TSB培養では, 非選択増菌培養と同等の検出率 (71.5%) が得られ, 分離率 (34.3%) も向上させることができた. NCT-mTSB培養では, 顕著に高い分離率 (79.8%) でPCR陽性検体から本菌を分離することができた反面, 検出率は低かった (55.6%) . さらにNCT-mTSB培養では, 2種類以上のE. albertiiによる混合感染個体の糞便懸濁液から増菌培養なしで分離される遺伝子型のE. albertiiが分離されない検体も多数認められた. その原因としては, NCT-mTSB培養に感受性のE. albertiiが存在すること, 糞便中に存在するE. albertii菌数がNCT-mTSBでの増殖培養に必要な菌数よりも少ないことであることが明らかになった. それぞれの選択増菌培地には長所と短所がある. 信頼性の高いデータを得るためには, 複数の増菌培養法を組み合わせることが重要である.
ISSN:1340-8267
1882-5982
DOI:10.5803/jsfm.42.34