自己心膜パッチ形成術と大網充填で救命し得た感染性大動脈瘤の1例

感染性動脈瘤は合併症罹患率,および死亡率の高い重篤な疾患であり,治療にはしばしば難渋する.現在も標準的な治療法が確立されておらず,解決すべき問題点が多い疾患である.今回我々は,弓部大動脈の感染性動脈瘤に対し,自己心膜パッチ形成術および大網充填により救命し得た1例を経験したので報告する. 症例は74歳男性.左前胸部痛を伴う発熱と咳嗽を主訴に近医受診し,CTにて縦隔腫瘍破裂の疑いで当院呼吸器外科へ救急搬送された.入院後に施行した複数回の造影CTで感染性動脈瘤と診断され,手術のため当科に転科となった. 手術は25℃の低体温循環停止下で行い,瘤壁を切除し,欠損孔を自己心膜によるパッチ形成術で閉鎖した....

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Published in心臓 Vol. 50; no. 8; pp. 909 - 915
Main Authors 田口, 真吾, 花井, 信, 山城, 理仁, 小野口, 勝久, 蜂谷, 貴, 山崎, 真敬, 墨, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.08.2018
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.50.909

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Summary:感染性動脈瘤は合併症罹患率,および死亡率の高い重篤な疾患であり,治療にはしばしば難渋する.現在も標準的な治療法が確立されておらず,解決すべき問題点が多い疾患である.今回我々は,弓部大動脈の感染性動脈瘤に対し,自己心膜パッチ形成術および大網充填により救命し得た1例を経験したので報告する. 症例は74歳男性.左前胸部痛を伴う発熱と咳嗽を主訴に近医受診し,CTにて縦隔腫瘍破裂の疑いで当院呼吸器外科へ救急搬送された.入院後に施行した複数回の造影CTで感染性動脈瘤と診断され,手術のため当科に転科となった. 手術は25℃の低体温循環停止下で行い,瘤壁を切除し,欠損孔を自己心膜によるパッチ形成術で閉鎖した.人工心肺離脱後,大動脈周囲に大網充填を行い,手術を終了した. 術中の瘤壁培養でMSSAが同定され,感受性に従いスルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)を4週間投与した.以降の経過は良好で術後39日目に退院,現在まで再発を認めず経過している. 複数回のCT施行による慎重な追跡が極めて有効で,細菌学的診断,臨床経過,患者の耐術能など総合的な観察を行い,適切な術式を選択したことで救命し得た1例であり,標準的な術式が確立されていない疾患群に対するアプローチとして示唆に富む経験であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.50.909