腎癌に対する腎部分切除術後の長期腫瘍学的アウトカム
腎部分切除は,小径腎癌の標準的術式としてガイドラインにも示されるようになった.その根拠は腎部分切除による長期の癌制御が,それまでのgold standardである根治的腎摘除に比べて差がない事が第一の理由である.もう一つは慢性腎臓病(CKD)の予防により心血管病変の発症を抑え,全生存率を改善する事につながる可能性が示唆されていることである.多くの後ろ向き研究が腎部分切除において全生存率が改善していることを示しているが,最近発表された前向きランダム化試験のEORTC研究では腎部切も根治腎摘も全生存率に差が無い事が示されている.腎機能温存がうまく図られているかどうかがわからないという欠点はあるがエ...
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Published in | Japanese Journal of Endourology Vol. 24; no. 2; pp. 208 - 213 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本泌尿器内視鏡学会
2011
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Subjects | |
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ISSN | 2186-1889 2187-4700 |
DOI | 10.11302/jsejje.24.208 |
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Summary: | 腎部分切除は,小径腎癌の標準的術式としてガイドラインにも示されるようになった.その根拠は腎部分切除による長期の癌制御が,それまでのgold standardである根治的腎摘除に比べて差がない事が第一の理由である.もう一つは慢性腎臓病(CKD)の予防により心血管病変の発症を抑え,全生存率を改善する事につながる可能性が示唆されていることである.多くの後ろ向き研究が腎部分切除において全生存率が改善していることを示しているが,最近発表された前向きランダム化試験のEORTC研究では腎部切も根治腎摘も全生存率に差が無い事が示されている.腎機能温存がうまく図られているかどうかがわからないという欠点はあるがエビデンスレベルの最も高い研究であり,全生存率におけるメリットを支持するにはさらなるデータが必要である.腎部分切除における欠点とされる腎局所再発の問題では,その割合が1%台と非常に低いことが報告され,腎周囲のマージン厚や病理学的断端陽性も局所再発率,癌特異的生存率には差が無い事が示されている.両側性RCCにおいて局所再発率が高い事,こうした症例では局所再発が確認される前にすでに遠隔転移が確認されている事が多く,局所再発には転移の要素も含まれている事が示唆されている. したがって,腎部分切除における長期にわたる癌制御は根治的腎摘除とほとんど変わりなく,他のメリットを考慮すると小径腎癌に対しては第一選択として積極的に施行することが望ましいと考えている. |
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ISSN: | 2186-1889 2187-4700 |
DOI: | 10.11302/jsejje.24.208 |