病原体伝播に関わるマダニ因子~マダニ唾液中の免疫抑制因子

「1. はじめに」マダニはカやツェツェバエなどと異なり, 大量の血液を必要とし, 長期間かつ持続的な吸血を行う. この特徴的な吸血様式を維持するために, マダニは多くの戦術を有している. 例えば, 吸血開始時に, セメント物質と呼ばれる分泌物により自身の口下片を宿主体内に強固に固定することで, 吸血の安定性を高めている(Kazimirova and Stibraniova, 2013). また, このとき同時に血液プールと呼ばれる特異な環境を作り出す. カやシラミなどのように口吻を直接血管内に挿入する血管内吸血型に対し, マダニのように真皮に血液プールをつくり, これを吸血する様式を血管外吸血...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 70; no. 4; pp. 189 - 197
Main Authors 前川, 直也, 岡川, 朋弘, 村田, 史郎, 大橋, 和彦, 今内, 覚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 25.12.2019
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ISSN0424-7086
2185-5609
DOI10.7601/mez.70.189

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Summary:「1. はじめに」マダニはカやツェツェバエなどと異なり, 大量の血液を必要とし, 長期間かつ持続的な吸血を行う. この特徴的な吸血様式を維持するために, マダニは多くの戦術を有している. 例えば, 吸血開始時に, セメント物質と呼ばれる分泌物により自身の口下片を宿主体内に強固に固定することで, 吸血の安定性を高めている(Kazimirova and Stibraniova, 2013). また, このとき同時に血液プールと呼ばれる特異な環境を作り出す. カやシラミなどのように口吻を直接血管内に挿入する血管内吸血型に対し, マダニのように真皮に血液プールをつくり, これを吸血する様式を血管外吸血型という. この吸血プールは, マダニが吸血を行っている局所であると同時に, 宿主にとっては免疫機構が働く最前線の局所でもある.
ISSN:0424-7086
2185-5609
DOI:10.7601/mez.70.189