右冠動脈の血行再建により改善した神経調節性失神の1例

症例は66歳, 男性. 高血圧, 2型糖尿病, 腎硬化症(stage IV), 脂質代謝異常症で近医内科へ通院していた. 2010年夏ごろから胸痛を伴わない失神発作が数回あり, 当院へ精査目的で紹介された. 24時間ホルター心電図で発作性上室性頻拍と発作性心房細動を認め, 頻拍停止時に最大2.5秒の洞停止をきたした. 心臓電気生理学的検査(electrophysiologic study; EPS)で洞結節回復時間は2.5秒で房室結節二重伝導路を認め, 冠動脈造影で右冠動脈#2: 75%と左冠動脈回旋枝#13: 75%に有意狭窄を認めた. 失神の原因として徐脈頻脈症候群を考え, 房室結節遅伝導...

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Published in心臓 Vol. 44; no. 6; pp. 717 - 723
Main Authors 白石, 裕一, 藤岡, 歩, 中村, 猛, 松室, 明義, 白山, 武司, 松原, 弘明, 山野, 哲弘, 松尾, 清成, 沢田, 尚久, 畔柳, 彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2012
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.44.717

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Summary:症例は66歳, 男性. 高血圧, 2型糖尿病, 腎硬化症(stage IV), 脂質代謝異常症で近医内科へ通院していた. 2010年夏ごろから胸痛を伴わない失神発作が数回あり, 当院へ精査目的で紹介された. 24時間ホルター心電図で発作性上室性頻拍と発作性心房細動を認め, 頻拍停止時に最大2.5秒の洞停止をきたした. 心臓電気生理学的検査(electrophysiologic study; EPS)で洞結節回復時間は2.5秒で房室結節二重伝導路を認め, 冠動脈造影で右冠動脈#2: 75%と左冠動脈回旋枝#13: 75%に有意狭窄を認めた. 失神の原因として徐脈頻脈症候群を考え, 房室結節遅伝導路アブレーションとペースメーカー植え込み術を行った. しかし, 術後も心房細動(atrial fibrillation; AF)に伴う失神前駆症状が反復したため, head-up tilt試験(HUT)を行った. HUT単独負荷では異常なく, イソプロテレノール負荷HUTにて血圧低下と失神前駆症状を認めた. 右冠動脈灌流域の虚血が失神に関与していると考え, #2に対して血行再建を行ったところ, 失神は消失しHUTも陰性となった. 神経調節性失神(neurally mediated syncope; NMS)で認める一過性の徐脈や血圧低下と右冠動脈灌流域の虚血との関係は過去に報告されているが, 本例のように血行再建前後で評価されたものは少なく報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.44.717